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真珠(しんじゅ)箱の島の港では、おおぜいの人々が長旅から帰ってきた船を出むかえていました。
その後、悪魔(あくま)島からの生還(せいかん)者のうわさはすぐに島中に広まり、ついには、国王がその生還者を宮殿(きゅうでん)に呼(よ)ぶことになったのです。
シンドバッドは国王の前に出るのをおそれたりはしませんでした。かれは無実であり、あの時わざと王女の部屋へ入りこんだわけではなかったからです。 それに、かれは今、海のなぞの中でもとても大きなある秘密(ひみつ)を持って島に帰ってきていました。しかし、かれにとってはそれよりももっと大事なことがあったのです。それは、あのスルターナにもう一度会い、プロポーズをすることでした。

国王とハンザラ王子はシンドバッドをていちょうに出むかえました。それから国王がかれに悪魔島のことをたずねると、シンドバッドは勝利者のほほえみをうかべて、こう言いました。
「へいか、わたしは海のある秘密(ひみつ)を知っております。へいかがいずれは悪魔島を支配(しはい)なさり、開国者として入られるよう、その秘密をお話しましょう。」
それを聞くと、国王とハンザラ王子はおどろきに満ちた目でシンドバッドを見つめました。そこでシンドバッドはこのように続けました。
「へいか、悪魔島の海岸やその周辺の地域(ちいき)には、強い磁気(じき)を持った岩場があります。そのため、鉄製(せい)の船や剣(けん)などの武器(ぶき)はその岩場のえじきとなり、みな海の底へと引きずりこまれてしまうというわけなのです。」
すると、国王はとつぜん立ち上がり、父が息子(むすこ)をだき寄(よ)せるように、シンドバッドをだき寄(よ)せ、こう言いました。
「それならば、われわれは鉄を使わないで船を造(つく)ろうではないか。木材をはめこんで組み立て、木の皮で固くしばらせよう。そして武器を積まずにその船を送り出すのだ。」
さらに国王は、「マスルールよ、真珠(しんじゅ)のつまったふくろを持ってきなさい!」とさけび、国王の侍従(じじゅう)マスルールは急いで真珠がつまった小ぶくろを持ってきました。すると国王はそれを大発見の褒美(ほうび)として、シンドバッドに差し出したのです。
しかしその時、ハンザラ王子がこう言いました。
「わたしにも、あなたを喜ばせる良い知らせがあります。わたしは数日後に、スルターナと結婚(けっこん)することになったのです。ですからあなたを婚礼(こんれい)の祝いの席に招待(しょうたい)しましょう。そこであなたは王族たちと席をならべるのです。」
シンドバッドは悲しみと絶望(ぜつぼう)の中で宮殿(きゅうでん)を後にしました。かれの希望はみな消えてしまったのです。かれは胸(むね)がふさがれたように苦しい気持ちになり、2日の間、宿からまったく出ず、だれとも口をききませんでした。すると3日目に、ハサンという名の商人がかれのもとを訪(たず)ねてきました。かれは、無実が証明(しょうめい)されてろう屋を出たスルターナの父でした。
ハサンは、シンドバッドと知り合うためにやって来たと言い、娘(むすめ)のスルターナが青年の格好(かっこう)に変装(へんそう)していた時、かの女を世話して助けてくれたことについて、感謝( かんしゃ )の気持ちを伝えたかったのだ、と話しました。そしてかれは最後に別れを告げながらこう言ったのです。
「スルターナはあなたのことをいつもほめていました。あなたは娘にとってやさしいお兄さんでした。それで、かの女はあなたにわたしてくれるようにと、自分のマフラーをわたしにたくしたのですよ。あなたへのおくり物だと言って。」
それを聞きながら、シンドバッドは必死で涙(なみだ)をこらえました。
それからシンドバッドは、バスラへ向かう船に乗りました。かれはほとんどの時間を船の手すりにもたれながら海をながめて過(す)ごしました。
そんなある日、急に船が大きくゆれ、シンドバッドは思わずふらついて海へ落ちそうになりました。その時、かれが持っていた真珠(しんじゅ)の小ぶくろが落ち、海の中へしずんでしまったのです。それを見たシンドバッドは悲しげにほほえみ、「真珠は海にもどっていったのだ!」と言いました。
しかしすぐにいかりがこみ上げてきて、かれは帽子(ぼうし)から青い羽根をぬき取り、それも海へ放り投げました。するとこの時だけはなぜか羽根は輝(かがや)かず、あの青い鳥の声も聞こえてはきませんでした。その時、急に強い風がふき、羽根を海へと運んでいってしまいました。そしてその後、その風はふいた時と同じように、またふいに静まりました。
その夜、シンドバッドはなかなか寝(ね)つけないので、甲板(かんぱん)へと上がっていき、自分のことをいろいろ考えました。真珠を失い、青い羽根を失い、そして愛する人も失ってしまったかれにとって、海の物語はとても悲しく、だれにも語りたくないものとなってしまったのです。

その時、何かが羽ばたくような音が聞こえました。そこでシンドバッドがふり返ってみると、月の光の中に青い鳥の群(む)れが見えました。その鳥たちはみなくちばしに、何か暗やみの中で光るものをくわえています。すると、鳥たちはおどろいているシンドバッドに近づいてきて、かれの頭の上で円をえがくように飛びました。
それから、みなくちばしにくわえていたものをかれの帽子(ぼうし)の上に投げ落とし、また空へともどっていったのです。よく見ると、それは美しく輝(かがや)く真珠(しんじゅ)でした。こうしてシンドバッドの帽子は、やがて真珠でうめつくされたのでした。 |