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シンドバッドがろう屋に連れてこられると、ろう屋の看守(かんしゅ)は、シンドバッドがかぶっている羽根つきの帽子(ぼうし)に目をつけました。そしてかれからそれをうばって自分がかぶりました。
それを見てシンドバッドはやっとその青い羽根のことを思い出し、心の中でこう言いました。
「今こそ、あの時あの羽根から見聞きしたことが本当のことだったのか、夢(ゆめ)だったのかがはっきりする時なのだ。」
そこでシンドバッドは、看守に帽子から羽根をぬき取らせるように仕向ける策(さく)を考え、やがてかれに向かってこのように言いました。
「もしわたしの身の上に何か起きた時には、どうか母にその帽子の羽根をわたして下さい。その羽根にはまほうがかけられているので、この上なく美しいメロディーをかなでてくれるのです。」
それを聞いた看守は、「もし本当に、この羽根がこの上なく美しいメロディーをかなでてくれるのならば、わたしもぜひそれを聞いてみたいじゃあないか!」と言いながら、さっそく帽子から羽根を引きぬいたのです。

そのしゅん間、羽根が燃(も)えるような青い光を放ったかと思うと、「わたしです、シンドバッドよ!」という声が聞こえてきました。そこでシンドバッドはこうさけびました。
「お願いだ、青い鳥よ。わたしをこのろう屋から出しておくれ!」
すると、「看守(かんしゅ)よ、門扉(もんぴ)を開けよ!」というさけび声が聞こえました。 看守はおどろいてその場に凍(こお)りついたようになっていたのですが、そう命じられると、何が何だかわからないままに歩いていき、門扉(もんぴ)を開けました。そこでシンドバッドは急いで看守をしばりつけ、かれの服に着がえて変装(へんそう)し、ろう屋からだっ出したのです。もちろん、大切な帽子と羽根も忘(わす)れることなく持ち出して。
しかし、すぐにしゅう人のだっ走事件は明らかになり、警吏(けいり)たちはシンドバッドを探(さが)して島のあちこちで見張(は)っていました。そこでシンドバッドは、島で長くかくれていることは無理だとさとり、港へ向かいました。そして海に出ようとしている小さな船を見つけ、急いでそれに乗りこんだのです。
船に乗りこんだシンドバッドは、ある日、船長や船員たちが何度も空を見上げているのに気づきました。そこでその訳(わけ)をたずねると、船員たちはこう言いました。
「われわれは悪魔(あくま)島の近くにいるというのに、空にはあらしの前ぶれが見えるのだ!」
それを聞いてシンドバッドが、「じゃあ、その悪魔島に避難(ひなん)すれば良いのではないですか?」と言うと、船員はこう言いました。
「悪魔島にはだれ一人近づけないのだよ。近づいた船はみなしずんでしまうのだ。」
シンドバッドは急にこわくなり、みなといっしょにあらしの気配を見守ったのでした。
それからすぐにあらしはやってきました! 海風が激(はげ)しくふきあれ、波はあれくるったように乱(みだ)れました。船は大波とともにまい、強風にもてあそばれました。船員たちは、あらしが船を悪魔島の方へ引き寄(よ)せるのを感じていました。そのためかれらは恐怖(きょうふ)にかられ、絶望(ぜつぼう)の中、なおも死のかげを追いやろうと必死になりました。
しかしあらしはかれらよりもずっと強かったのです。悪魔(あくま)島に近くまで来ると、まるで何か巨大(きょだい)な力が船を海の底へと引きずりこむように感じられました。そしてしばらくすると、とうとう船は海の中へと姿(すがた)を消していったのです。
シンドバッドは自分がおぼれつつあり、波にていこうできなくなっていくのを感じました。大きな力が船を海中へと引きずりこみ、かれ自身をもつかえたようでした。
しかし、それでもシンドバッドには残されたただ一つの希望がありました。かれは帽子(ぼうし)に手をのばし、青い羽根をぬき取りました。するとそのしゅん間、羽根はかれの手の中で青く異様(いよう)な光を放ち、それからこのような声が聞こえてきました。
「あなたの短剣(けん)を海に投げ捨(す)てなさい、シンドバッドよ!」
そこでシンドバッドはすぐに短剣をベルトからはずし、海に投げ捨てました。すると急に、かれをつかえて海中に引きずりこもうとしていた力がしずまったのです。そして周りを見回してみると、そこに船の姿(すがた)はもう見当たりませんでした。
シンドバッドは海にただよう船の板木まで泳いでいってそれにつかまり、息を整えてしばらく気を落ち着かせました。
それからシンドバッドは、悪魔(あくま)島からできるだけ遠くへ離(はな)れようと、板木を前に押し出しながら泳ぎました。悪魔島の方へこぎ進んでも、そこに助けてくれる者はだれもいないことを知っていたからです。
やがて夜がやって来ました。シンドバッドは、自分は本当に一人ぼっちなのだと感じ、心の中には恐怖(きょうふ)や絶望(ぜつぼう)の気持ちがますます大きくふくらんでいきました。しかしそんな中、かれはあの悪魔島のなぞについてあれこれと思いをめぐらせてもいたのです。
シンドバッドはこうして一晩中板木をこぎ続けました。あらしはすでにおさまり、かれの周りの海はまるで広い池のように静かで落ち着いていて、その水面は月の光を受け、輝(かがや)く黄金の円ばんみたいに美しく光っていました。
やがて一夜が明け、シンドバッドはつかれ切っていたのですが、降(ふ)り注ぐ朝日がかれに再(ふたた)びエネルギーをあたえ、新たな希望をいだかせてくれました。そしてその時、とつぜんキラリとひとみを光らせたかと思うと、シンドバッドは大声でこうさけんだのです。
「あの島の秘密(ひみつ)がわかったぞ!」
そしてそのさけび声と共に強い意欲(よく)がわいてきて、かれは板木の上でうつぶせになり、力強く水をかき始めました。まるでこの少年の血潮(しお)は、あきらめやおそれや弱さなどというものを全く知らないかのように。シンドバッドは何時間も手で水をかき続け、その勢(いきお)いはけっして弱まることはありませんでした。
やがて日が暮(く)れてくると、地平線のはるかかなたに、海水を分け進む一せきの船のかげが見えました。それを目にしたシンドバッドは、これでもうすぐ助かるのだと思いました。しかしすぐにかれは思い直し、その船はあまりに遠く、自分はこの広大な海にたった一人、力なくさ迷(まよ)う者にすぎないことに気づいたのです。
そこでかれは再(ふたた)びあの青い羽根に手をのばしました。すると一しゅんにして羽根はまた青く輝(かがや)き、そしてこんな声が聞こえてきました。
「シンドバッドよ、たとえあなたが遠くにいても、あの船は近いのです。」

その時とつぜん、羽根から青いけむりの柱が立ちのぼり、あたり一面の空をうめつくしました。するとしばらくして、遠くにいたあの船が近づいてくるのが見えました。その船の船長は、火事を起こした船がいるのだと思い、急いで救助に来たのです。
やがて船はシンドバッドのところへやって来て、かれを海から引き上げてくれました。
そしてシンドバッドがちんぼつした船の船乗りだとを知ると、みな口々に、かれの生還(せいかん)を喜ぶ言葉をかけてくれました。悪魔(あくま)島から生還できた者のことなど、いまだかつてただの一度も聞いたことがなかったからです。
かれらの船は、長い航海を終えて「真珠(しんじゅ)箱の島」へ帰るところでした。それで船乗りたちはみな、故郷(こきょう)の島と家族のもとへ帰るのを喜んでいました。しかし、今回いつもとはちがっていたのは、悪魔島にいどんで勝った英雄(えいゆう)といっしょだ、ということでした。
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