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 ■なんだろう? 第13回 「アラビア・オリックス」

アラビア・オリックス

 かつて、アラビア・オリックス(アル=ワディーヒー)は、アラビア半島の砂漠(さばく)のほとんどに生息していましたが、狩猟(しゅりょう)により、1970年代には絶滅(ぜつめつ)の危機(きき)を迎(むか)えました。  過酷(かこく)な環境(かんきょう)でも生きていくことができる最も美しい動物の一つが、人の手によって、絶滅へと追いこまれたのです



アラビア・オリックス

 アラビア・オリックス(アル=ワディーヒー)は中型のほ乳動物です。その姿(すがた)は優雅(ゆうが)で美しく、長くまっすぐな2本の角を持っています。体の混(ま)じりけのない白さが特ちょう的で、日の下にいると、はるか遠くからでもその姿を見ることができます。

 アラブの人たちはオリックスの白い色をこよなく愛し、シルバーに近いその輝(かがや)く白のあざやかさから、「アル=ワディーヒー(注:アラビア語で「くっきりとした」という意味)」と名づけました。
 また、古代のギリシャ語やローマ語では、「オリックス」と呼(よ)ばれました。オリックスという言葉は、つるはしや先のとがったオノのことを意味しており、それによって長い角を表したものです。

 昔から詩人たちは、女の人をオリックスにたとえて表現(ひょうげん)したものですが、それは、オリックスの目の美しさや、歩く姿(すがた)の優美(ゆうび)さによるものです。
 また、多くの詩人たちがオリックスのことを剣(けん)にたとえ、遠くからでもきわだつその体の白さや輝きを表現したのでした。



アラビアオリックスの親子

 アラビア・オリックスは砂漠(さばく)や乾(かわ)いた谷間、砂丘(さきゅう)、わずかながら植物のおおいがある場所で暮(く)らしています。
 体長は140〜190センチメートル、体重は80〜100キログラムで、大まかにいえば、その姿や優美さ、がまん強さ、足の速さにおいては、馬に似(に)ています。角の長さは70〜75センチメートルで、メスの角のほうがオスのものよりも長く、よりとがっています。
 オリックスは、だいたい25〜30頭からなる群(む)れの中で暮らし、一番強いオスが群れを率(ひき)います。群れは夜になると、食料や敵(てき)から身を隠(かく)す適当(てきとう)な場所を探(さが)して、長い距離(きょり)を移動(いどう)します。



オリックスの群れ

 オリックスは草や砂漠(さばく)の植物を食料としています。乾季(かんき)には、水分が多く栄養価(か)の高い植物(注:サボテンなど)を食べたり、野生の植物の根を食べたりします。そのため、そのような根を探して土を掘(ほ)るオリックスの姿(すがた)を見かけることがあります。
 また、ほかの砂漠の動物と同じく、オリックスは、植物や草から水分を採(と)ることによって、必要とあれば、長い間水なしで暮らすことができるのです。

 オリックスは、アラビア半島の伝統(でんとう)文化と結びついた長い歴史を持つ動物で、かつては多数生息していたのですが、今では絶滅(ぜつめつ)の危機(きき)に瀕(ひん)している動物の一つに数えられています。
 1950年代の終わりころ、アラビア半島のアラビア・オリックスは最悪の状況(じょうきょう)に追いこまれ、野生ではわずか50〜60頭に満たないほどの数まで減(へ)ってしまいました。
 その原因(げんいん)は銃(じゅう)を持つ一部の人々による狩猟(しゅりょう)で、砂漠の奥地(おくち)においてさえも、オリックスは人間の狩猟から身を守れなくなったのです。

 しかし1962年には、国際(こくさい)植物・動物保護(ほご)団体が、いくつかの動物を捕獲(ほかく)して野生にもどせるようになるまで専用(せんよう)の場所で飼育(しいく)・保護するプログラムを開始しました。またそのような団体は、個人(こじん)の寄付(きふ)という形で、アラビア・オリックスを譲り受けました。
(注:湾岸諸国〈わんがんしょこく〉には、趣味としてオリックスなどの動物の飼育している人たちがいて、その人たちが自分のオリックスを寄付した。)
 アラビア・オリックスの群れの保護活動は、そのようにして集められたわずか9頭のアラビア・オリックスから始まったのでした。



動物保護センターを運営(うんえい)するサウジアラビアの皇太子(こうたいし)

動物保護センターの飼育

 アラビア・オリックスが絶滅の危機にさらされたことにより、オリックスを飼育・保護し、その数を増し、そして自然保護区に放して、いずれ元の生息地に戻(もど)すためのセンターが数多く設立(せつりつ)されました。
 サウジアラビアにおいては、アラビア・オリックスを自然に帰すプロジェクトは、「国家自然保護・育成協会」の基本(きほん)プロジェクトの一つであり、それにより、オリックスが元々生息していた地域(ちいき)に大きな自然保護区が設(もう)けられ、オリックスの家族数を増(ふ)やすためのセンターが設立されました。これらのセンターがになう役割(やくわり)は次のようなものです:

栄養バランスのよいエサをじゅうぶんに与(あた)えること。
清潔(せいけつ)な水そうでじゅうぶんな飲み水を与えること。
静かで、太陽の暑さから身を守ることができる陰(かげ)のある飼育(しいく)小屋を多数建てること。また、みごもったメスは、適度(てきど)な温度と清潔が保(たも)たれ、完全な管理が行きとどく個別(こべつ)の飼育小屋に隔離(かくり)すること。
獣医(じゅうい)によって定期的に最善(さいぜん)の健康管理をすること。
争いを起こさせないために、一つの飼育小屋にオス・メス多数のオリックスを同居(どうきょ)させないこと。
飼育小屋の床(ゆか)をつねに清潔に保つこと。


オリックスのケンカ


乳(ちち)をやるオリックス

 サウジアラビアに生息するアラビア・オリックスは、自然保護区に放したのち、660〜700頭を数えるようになりました。アラビア・オリックスやその他の絶滅(ぜつめつ)の危機(きき)に瀕(ひん)している動物の数をもっと増やしていくために、「国家自然保護・育成協会」は、数々の素晴(すば)らしい役割を果たしています。
 しかし、その中で最も重要なものは、これらの美しい動物たちを保護し、それらが狩猟(しゅりょう)の被害(ひがい)にあわないようにすることの重要性を考える意識(いしき)を広めたことでしょう。

保護区のオリックスの群れ


アラビア・オリックスの親子




All Photos Courtesy of www.arabian-oryx.com


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