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アラビアもよう
ハキムとこどもたち


 ■ハキムとこどもたち 第2回 「アラビア語とアラブ」

アラビア語とアラブ

 ある晴れた日の昼下がりのこと。自然ゆたかなアラビア村の真ん中にある泉 のそばの大きな木の下で、ハキムおじいさんが美しい本をかた手に、いつものように考え事をしています。そこへ、 学校帰りの子どもたちが通りかかりました。手にはオリーブのなえ木を持っています。



翔くん


ハキムおじいさん、アッサラーム・アライクム。


ザキ
ラナ
アッサラーム・アライクム。


ハキム

ワ・アライクム・アッサラーム。みんな元気でなによりだね。手に持っているのはオリーブのなえ木じゃないかね。


ザキくん

そうなんです。学校で緑化運動に力を入れていて、自分たちの家の周りに植えるようにみんなに配られたんです。


ハキム

そうかい、そうかい。学校もいいことをするものだね。


彩ちゃん

それより、ハキムおじいさん、おじいさんが持っている本はなあに? とても美しい表紙ね。


ハキム


これはクルアーンというもので、アラビア語で書かれているのだよ。それに美しいのは表紙だけではないんだよ。
わたしたちムスリムはこのクルアーンをとても大切にしているんだ。




クルアーン

クルアーン



彩ちゃん


そうなんですか。これがアラビア語なんですね。本当にきれいだわ。


翔くん
ハキムおじいさん、クルアーンというのは何ですか?


ハキム
クルアーンとは、アッラーご自身の言葉が書かれている本だよ。アッラーが大天使(だいてんし)ジブリールを通してムハンマドに下された言葉なのだよ。


彩ちゃん


クルアーンは預言者(よげんしゃ)ムハンマドが作ったのではないのですね。



ハキム
そうだよ。クルアーンは人間が創作(そうさく)したのではないのだよ。ムハンマドは読み書きができなかったので、アッラーの言葉が下されるとすぐに、読み書きのできる仲間(教友)に書きとめさせたのだよ。クルアーンは全部で114章あり、その章や句(く)は最初にアッラーがしめされたとおりの順番で伝えられ、約1400年をへた現在まで一言一句(く)たりとも変わっていないのだよ。
そして、そのクルアーンの文章は当時のアラビア文学者をおどろかせるほどかんぺきで、美しいものだったんだ。


彩ちゃん

すばらしいわ。


ハキム

それに、クルアーンはアラビア語で書かれた最初の書物だったのだよ。


ザキくん


ぼくの家にもクルアーンがあります。ぼくの家族もみんな、クルアーンをとても大切にしていますよ。


ラナちゃん


わたしの家も同じよ。なにより、わたしはクルアーンを聞くのがとても好きなの。


ザキくん


ラナちゃんも?! 実は、ぼくも大好きなんだ。クルアーンのひびきを聞くと心がすうーっとあらわれていくのがわかるんだ。だからぼく、クルアーンをがんばって覚えたいんだ。





ハキム

それはとてもすばらしいことだよ。クルアーンとはアラビア語で「読誦(どくしょう)するもの」という意味だよ。さっきも話したけれど、クルアーンはアッラーから大天使(だいてんし)ジブリールを通してムハンマドに啓示(けいじ)された、神の言葉なのだよ。当初はまだ、まとまった本の形にはなっていなかったし、だからこそ、初期のムスリムにとって、クルアーンの言葉を暗記し、声に出して唱えることは、大きな喜びだったのだよ。神の言葉を唱えることはムスリムにとっておおきな喜びなのだから。
現在でも世界中のムスリムたちはクルアーンを読誦(どくしょう)し、暗記することに喜びを感じているよ。



翔くん


世界中ですか! わあ、すごいなあ。


彩ちゃん


世界中のどんなところに住んでいるのですか?


ハキム

世界中のほとんどの地域(ちいき)に住んでいるよ。今からおよそ1400年前にアラビア半島で預言者(よげんしゃ)ムハンマドによって伝えられたイスラーム教はあっという間に世界中に広がっていったのさ。


翔くん



どうしてそんなに広がったのですか?


ハキム

それはイスラームの教えが公正で寛大(かんだい)であったからだよ。神の前では国籍(こくせき)、人種、民族、はだの色、職業(しょくぎょう)、社会的地位、貧富(ひんぷ)の差、男女の性別(せいべつ)に関係なく、すべての人は平等であるという教えだよ。そのために、多くの国の、多くの人たちがこの教えを受け入れていったのだよ。


アルファビット

アラビア文字のアルファベット



彩ちゃん

どんな国々があるのかしら。行ってみたいわ。


ハキム

なかでも代表的な地域(ちいき)はアラブとよばれる国々だよ。中東のサウジアラビア、シリア、ヨルダン、レバノン、イラク、カタール、アラブ首長国連邦(しゅちょうこくれんぽう)、イエメン、クウェート、オマーンなどの国々さ。


翔くん


ぼく、聞いたことあるよ。サッカーのワールドカップに出場している国々の名前だ。


ハキム
翔はサッカーが好きなんだね。


翔くん




はい! 大好きです。将来(しょうらい)は、サッカー選手になって世界を飛び回りたいんです。


ハキム

それはよかった。それから、まだまだあるよ、ムスリムが住んでいる国といえば、エジプト、スーダン、モロッコ、チュニジア、アルジェリア、などのアフリカの国々、ヨーロッパやアジアではトルコ、バルカン半島の国々、イラン、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュ、マレーシア、インドネシア、中央アジアの国々などがあるよ。そのほかに・・・。

       
           

アラビア語の書き方



彩ちゃん


まだ、あるんですか!


ハキム

(ほほえんで)そうだよ。今でも、東アジアに、東南アジア、ヨーロッパ。ロシアに、アメリカ大陸。国境をこえて広がり続け、なんと世界の人口のおよそ5分の1がムスリムだといわれているんだよ。


翔くん

それらの人たちはアラビア語がわかるのですか。


ハキム

ムスリムは、アラビア語はアラブの人々が話す言葉としてだけでなく、「預言者(よげんしゃ)ムハンマドとその妻たちが話していた言葉」であり、「アッラーが自らの言葉を最後の啓示(けいじ)をする時に選ばれた言葉」であると考えているのだよ。ふだん、アラビア語を一言も話さないムスリムでも、礼拝(れいはい)のときは、アラビア語のみを用いるのだよ。

ザキくん



たとえば、言葉がまったくわからない国を旅していても、アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大〈いだい〉なり)という言葉を聞くと、礼拝(れいはい)の時間をのがさずにすむわけですね。




ハキム
そのとおりだよ。ザキ。アラビア語はムスリムにとって、公用語であり、母なる言葉なのだよ。
それに、昔のムスリムたちは学問にも力を入れていたんだ。外国語の多くの文学作品をアラビア語に翻訳(ほんやく)したんだよ。ギリシャ語やサンスクリット語の作品をアラビア語に翻訳(ほんやく)したものがたくさん残っているんだ。なかには、オリジナルが失われているものがたくさんあって、アラビア語訳(やく)が残っていて幸運だったというケースもあるのだよ。


翔くん

わあー、たすかったー。

ハキム
そして、あらゆる種類の学問のための当時の国際語ともなっていたんだ。最初のムスリムはほとんどすべてがアラブの人々だったけど、イスラームの教えを受け入れて、いろんな人種やことなった文化をもった人たちがムスリムになった。イスラームが広まるにつれて、さまざまな学問や技術の研究や交流が行われていったんだ。


ラナちゃん


たとえば、どんなものがあるのですか。


ハキム

(少し考えこみ)そうだね、中国の紙を作る技術(ぎじゅつ)や、インドで発見された数字(後にアラビア数字と命名)をヨーロッパに伝えたし、そうそう羅針盤(らしんばん)もアラブから、ヨーロッパに伝わったんだよ。


彩ちゃん

船についているあの羅針盤(らしんばん)ですか?


ハキム
そうだよ、そのとおりだよ。彩。学問の分野だけでなく、通商も活発に行われ、さまざまなものが行きかったんだよ。なにより、大切なことは、そういうことができたのは、アラブの人たちが、学問や文化を寛容(かんよう)な広い心で理解し、大切に守ってきたからなんだ。


翔くん

ぼく、アラブやアラビア語が、こんなに世界に大きく貢献(こうけん)してきたとは知らなかったよ。


ハキム
そうかい、そうかい。そうしてアラビア語は、いま現在でも国連の公用語のひとつとして、国際社会の貢献(こうけん)に大切な役割を果たしているのだよ。


彩ちゃん



わたし、ぜひアラビア語を学んでみたいわ。

ラナちゃん

いっしょに学びましょうよ。わたし、アラビア語の書道も習っているの。今度いっしょに行ってみない?



アラビア書道
アラビア書道

アラビア書道 (本田孝一先生の作品)



彩ちゃん


ええ、必ず、きっとね。


翔くん

ぼくも学びたいな。アラビア語が話せたら、いろんなサッカー選手と話ができるからね。


ザキくん


わあ、翔くんも彩ちゃんもラナちゃんも、みんなすごいな。
ハキムおじいさん、実はぼく、前から国際的な仕事にとても興味(きょうみ)があったんです。いろいろな国々の人たちと力を合わせて、世界のみんなが、仲良く平和にくらせるようにって。


ハキム

(ほほえんで)ほほう、それは、それは。みんな、がんばっておくれ。イスラームはもともと平和を意味する言葉だからね。とてもいいことだよ。
そうそう、ちょうど今、君たちが手にしているオリーブの木も「平和」を意味するんだってことを知っていたかい? わたしの畑にもオリーブの木があってね。オリーブの実はおいしいし、油もとれる。人間にとって、とてもありがたいものだ。実にアッラーはわたしたちにすばらしいものをあたえてくださった。


彩ちゃん

(自分のなえ木を見て)そうだったんだ。


ラナちゃん

わたしたち、この木を大切にするわ。


翔くん


ハキムおじいさん、ありがとうございました。また、いろいろ話を聞かせてください。
ザキ
ラナ

ありがとうございました。


ハキム
一度、うちにも遊びに来ておくれ。
ありがとう。シュクラン・ジャズイーラン。

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