その3
一方長男のマスルールは、父の死後しばらくすると、ふたたびもとのたいだな暮(く)らしにもどってしまいました。夜昼かまわず酒えんをもうけ、そこにはあちこちから人が集まり、酒を飲んではさわぎます。
かれらが気に留(と)めることは、酒席でめずらしくおもしろい話をし、気をよくしてすべてを忘(わす)れることだけです。かれの仲間は、げびた者やおく病者、そしてぎぜん者たちばかりで、みなそろってお金に強欲(ごうよく)な者たちでした。
こうしてマスルールが父から受けついだ遺産(いさん)を使い果たすと、仲間たちは一人また一人とかれをはな離れていきました。
そしてかれらがマスルールを呼(よ)ぶ際(さい)にかんしていたそんしょうはべっしょうに変わり、一夜にしてかれは、「気前の良い高貴(こうき)な方」から、ただの「だ落者」となったのです。
すっかり破産(はさん)してしまい、仲間に捨(す)て去られたマスルールは、ある夜、今までむだにした年月や、自分を通り過(す)ぎてしまった多くの時間のことを、苦々しく思い出しました。そしていだいな父のゆいごんを思い、どうしてそれに気をとめなかったのか、そしてどうしてはめつへの道をさけなかったのか、と心底くやみ、こうかいのなみだを流しました。
しかし、かれはまだ、自分が酒と遊びについやした長い年月が、かれの心をむしばみ、その体に重い病を宿らせていることに気がつかないでいたのです。
そしてかれは急に胸(むね)の苦しさを覚え、一声さけんだかと思うと、ばったりとゆかにたおれこみ、ゆかの上でかれの体は冷たくなっていたのでした。
しかしかれの様子を気にするような友達はなく、だれにも知られないままかれの体はそのままくさっていきました。そしてその異様(いよう)なにおいが通りにまで届(とど)くようになり、そこでようやくりんじんたちは異変(いへん)に気付いたのです。
マスルールの部屋へ入ってみたりんじんたちは、ようやくかれの死を知り、弟のシャリーフのところへその遺体(いたい)を運びました。
そのこどくな死を知ったシャリーフは、兄のために心からなげき悲しみ、遺体を墓(はか)にうめたのでした。
つづく
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