昔、3人の王子を持つ一人の王がいました。王子たちは3人とも、性質(せいしつ)も好みも興味(きょうみ)もみなちがっていました。王と王妃(おうひ)は、かれらが大きくなったらどんな人物になるのか、知りたいと思っていました。
ある日、王は家臣たちを呼(よ)んでこう言いました。
「わたしが死んだ後で、残った王子たちがどのように生きていくのか、どうも気がかりでならないのだ。わたしが大きくしたこの王国を、かれらははたして守っていくことができるだろうか? そして3人のうちのだれがわたしのあとつぎとしてふさわしいのだろうか? そのあとつぎは公正に国を治めることができるだろうか?」
すると、一番の長老で、ちえ者として知られる一人の家臣がこう言いました。
「王子たちの行く末を見きわめるべく3人をお呼びになり、いくつか質問(しつもん)をして、それぞれがどんな答えをするのかご覧(らん)になってはいかがでしょうか。」
そこでさっそく一番上の王子が呼ばれました。かれは背(せ)が高く、強い意志(いし)の持ち主で、その容姿(ようし)からもいげんがただよっています。
長老がかれにこうたずねました。
「もしもあなたが王子としてではなく、鳥に生まれてきたとしたら、どんな鳥がいいですか?」
するとかれは少しの迷(まよ)いもなくすぐにこう答えました。
「わたしは、えものをめがけて勇ましく大空からまい降(お)りるはやぶさに生まれてきたいです。あのおおしい姿(すがた)は、まことの騎士(きし)を思い出させるじゃありませんか。」
次に2番目の王子が呼ばれ、兄と同じことをたずねられました。するとかれはこう答えました。
「ほかの鳥たちをそのすさまじい力であっとうするわしになりたいです。わしこそ、全くもって『鳥類の王』という異名(いみょう)にふさわしいじゃありませんか。」
そして最後に3番目の王子が呼ばれ、兄たちと同じことをたずねられると、ほほえんでこう答えました。
「家すずめがいいですね。見る者をみな幸せにするおだやかな小鳥ですから。あらあらしく争ったりせず、周りのものたちと仲良く平安に暮(く)らすじゃありませんか。」
3人との問答を終えた家臣たちは、しばらくの間、かれらの返事と、それが示(しめ)す性質(せいしつ)について協議しました。その結果、次のような意見でいっちしました。
一番上の王子は大変、勇しく、きっといぎょうをなしてその名を広く世間にとどろかせるにちがいない。しかし最後には敵(てき)にせいされ、ろうに入れられることになるかもしれない。
2番目の王子は確(たし)かにわしのように強く、そのため人におそれられ、きっとその残こくな仕打ちで人々にきらわれるにちがいない。そして最後には破めつし、おとしめられて死ぬことになるかもしれない。
しかし、3番目の王子はしんらいに厚(あつ)く、ちえ者で平安を好み、人にかんようでけんきょである。敵(てき)が無理やりいくさを仕かけない限(かぎ)り、争いを起こすことはないにちがいない。
かれならきっと臣民を愛し、異国(いこく)の民(たみ)にも敬意(けいい)をもって接(せっ)し、いだいな王権(おうけん)を立派(りっぱ)にいじして、無事にじゅみょうをまっとうするであろう。
それから数年がたち、3人の王子たちは大人になりました。
ある日、王子たちの父である王は、かつて家臣たちが進言してくれたことを思い出しました。そして自分の死後、1番上の王子には遠方の王国を、2番目の王子にはこの地の王国を、そして3番目の王子には金がつまった箱を一つだけのこすことを決めました。しばらくすると王はなくなり、王子たちは遺言(ゆいごん)どおりに王の遺産(いさん)を受けついで、それぞれの道へ歩き始めました。
王の死後から長い年月が立ちました。そして王子たちは、家臣たちがかつて予想したように、それぞれの結末をむかえたのです。
一番上の王子は、本当にはやぶさのように勇ましく果かんでしたが、やがて王権(おうけん)のすべてを遠方の民(たみ)にうばわれ、ろうに入れられて死にました。
2番目の王子は父から王権(おうけん)を受けつぎ、その玉座(ぎょくざ)をさらに高々とかかげました。しかしかれはごうまんで、臣民に対して残こくで不義(ふぎ)を行い続けたので、大変おそれられてにくしみを買い、そのために反乱(はんらん)でおとしめられ、最後には、旅のとちゅうで臣民に殺されてしまいました。
3番目の王子は、王がなくなった後、遺言(ゆいごん)どおりに金のつまった箱一つだけを受けつぎました。しかし最後には王として冠(かんむり)をいただき、父の玉座(ぎょくざ)にすわることになりました。そして父が残した王国をつぎ、公正と理知とで立派(りっぱ)に国を治めて、臣民に大変愛されたのでした。
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