考えぬいたサーリムは、やがて木の切り株(かぶ)をどこかから探(さが)してきて中をくりぬき、その中に1000ディナールの入ったふくろと、一枚(まい)の紙をつめました。
その紙には、このお金のふくろを送ったのはサーリフから1000ディナール借りたサーリムだ、ということが書かれていました。
それからサーリムはその穴(あな)を木片(もくへん)でうめ、それをかかえて神様にこういのりました。 「神様、わたしがこのお金を持ち主から借り、かれが証人(しょうにん)を求めた時、神様こそ証人としてじゅうぶんなお方だと話し合ったのを、あなたはよくご存知(ぞんじ)です。また、かれが保証人(ほしょうにん)を求めた時も、わたしは神様こそ保証人としてじゅうぶんなお方だとし、かれがそれになっとくしてくれたことも、あなたはよくご存知です。
わたしは、このお金をかれに返すために、村へ帰る船を探(さが)しましたがどうしても見つかりませんでした。ですから神様、この木の中に入っているものが、ちゃんと持ち主に届(とど)くよう、どうかお預(あず)かりください。」
それからサーリムは、川にその木を投げこみ、再(ふたた)び村へ帰る船を求めて歩き出しました。
切り株(かぶ)は波にただよい、潮(しお)に流されて、やがてサーリムの村の川岸へと流れ着きました。
一方のサーリフは、まだ川岸でサーリムの帰りを待っていました。しかしやがて待ちくたびれ、家へもどることにしました。
家に帰ろうとした時、大きな木の切り株(かぶ)が川岸に向かって流れ着きました。そこで急いで木を拾い上げ、こうつぶやきました。
「大きな切り株(かぶ)だ。たきぎにして火をくべるのにちょうどいい。家に持って帰ろう。」
こうしてサーリフは切り株をかついで家に帰りました。家に入るとその切り株を地面に置き、細いまきにするためにおので割(わ)ることにしました。
サーリフが切り株(かぶ)を割(わ)ると、中から何か出てきました。それはおどろいたことにお金の入ったふくろと手紙でした。
手紙を読んだかれは、それがあの正直者のサーリムが送ってくれた手紙であることを知り、さらにふくろの中身を調べると、そこには確(たし)かに自分が貸(か)した1000ディナールが入っていたのです。サーリフはそれを見ると両手をかかげ、神様に感謝(かんしゃ)をささげたのでした。
ちょうどその時、まだ川向こうにいたサーリムのほうでも、やっと村へ帰る船を見つけたところでした。
そして船に乗り、やっと村へ着くと、サーリムは1000ディナールの入ったふくろをかかえて、急いでサーリフの家へ向かいました。かれはあの切り株(かぶ)が、サーリフのもとへちゃんと届(とど)いていないのではないかと思ったのです。
サーリムはサーリフの家の門戸をたたきました。サーリフが門戸をあけると、そこにはお金の入ったふくろをかかえたサーリムが立っていました。
サーリムはすぐにそのふくろをサーリフに差し出して、こう言いました。
「あなたに借りたお金を返そうと、ずっと村へ帰る船を探(さが)していたのですが、どうしても今まで見つからなかったのです。さあ、これはあなたに借りたお金です。」
それを聞いてサーリフはえがおでこう言いました。
「サーリムよ、あなたはわたしに何か送ってくれたのではありませんか?!」
しかしサーリムはだまったままです。かれは、届(とど)くかどうかもわからないのにお金を切り株(かぶ)の中に入れて送ったことを、はずかしく思っていたのです。
そこでサーリフはうれしそうに言いました。
「あなたが送ってくれたお金は、少しもそこなわれずにわたしのもとに届(とど)きました。神様があなたの代わりにちゃんとしはらってくださったんですよ。」
それを聞いてサーリムは大変喜び、川向こうで一生けんめいかせいだお金を持って、自分の家へ帰ったのでした。
おわり
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