その3 老人の死
老人の言葉どおり、やがてすぐに老人の病は重くなり、ねどこを離(はな)れられなくなりました。それから息子(むすこ)たちを残して、ついにそのたましいは創造(そうぞう)主のもとにめされていきました。
そこで息子(むすこ)たちは集まって、今後の相談を始めました。またしゅうかくの季節が近づいていたので、しゅうかく物のあつかいについて計画を立てることにしました。
最初にまず、長男がこう言いました。
「今日からは、びんぼう人にも物ごいの者にも、また果樹園(かじゅえん)の木かげで休んだり水を飲んだりしようとする通りがかりの者にも、あたえられるものは何もない。
しゅうかくはすべてわれわれ3人で平等に分けるのだ。そしてそれぞれがそれをどう使おうとも構(かま)わないことにしようじゃないか。自分のためにためこもうとも、思い思いの方法で使おうとも。そうすればきっとわれわれはすぐに金持ちになれるはずだ。」
しかし、3人の中で父の性質(せいしつ)に一番よく似(に)ていた三男はこう言いました。
「それが正しいとは思えません。兄さんたちはわざわいを呼(よ)ぶ道へと進もうとしているのです。昔から毎年うちの果樹園(かじゅえん)のしゅうかくから、なにがしかのめぐみを得て暮(く)らしてきた貧(まず)しい人たちが、今年からはそれをもらえなくなるとしたら、かれらはきっと気を悪くするにちがいありません。
かれらは1年の間ずっと貧しさにたえ、毎年このしゅうかくの日を待ちわびているのです。わたしは父上のやり方をついだほうがいいと思います。神様はわたしたちがほどこしたものに報(むく)われ、ほどこしの後に残ったものだけで、じゅうぶんわたしたちを祝福してくださるでしょう。」
それを聞くと2人の兄はこう言いました。
「忠告(ちゅうこく)などよすがいい。われわれはおまえの言葉など聞きはしないのだ。おまえはまだ年若(わか)く未熟(みじゅく)者で、生活のことなど何もわかりはしないのだから。」
それでもあきらめずに三男はこう言いました。
「それでは神様におゆるしを願って、礼拝(れいはい)をささげてください。礼拝は、兄さんたちの良くない考えをきっと遠ざけてくれるでしょう。」
しかし二人の兄たちは耳を貸(か)さず、弟の言うことをまったく聞きませんでした。そして貧(まず)しい人たちが受ける取るべきほどこしを、止めてしまおうと思い決め、夜のねむりについたのです。
神様はかれらのごうまんな気持ちをお知りになり、その夜のうちに果樹園(かじゅえん)の木々にえき病をくだされました。するとたちまち果樹園はすべて砂漠(さばく)のようなあれ地に変わり果ててしまったのです。
朝をむかえた3人の兄弟は種や果実をしゅうかくしに、果樹園へ向かいました。すると果樹園が変わり果てたあれ地になっているのを見て、余(あま)りのことにおどろきとショックに打ちのめされてしまい、上の兄二人は口々に言いました。
「これがわれわれの、あの果樹園(かじゅえん)なのか? いや、そんなことがあるはずはない……。」
しかし、その時三男はこう言ったのです。
「いいえ、これがわたしたちの果樹園です。わたしたちが貧(まず)しい人々からほどこしを取り上げる前に、神様がわたしたちから果樹園を取り上げられたのです。」
かれらは自分たちがしようとしていたあやまちに気づき、大変悲しみました。しかしそれは神様が事をくだされた後のことだったのです。
おわり
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