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アラビアもよう
アラブのどうわ


 ■アラブのどうわ 第34回 神様はご存じ

神様はご存じ  昔アラビアに、アブー・フライラという貧(まず)しい人がいました。

 ある日アブー・フライラはひどくおなかをすかせていましたが、家に食べるものはなく、食べ物を買うお金もありませんでした。そこでどうにか食べ物を口にできないかと思い、家を出ました。

 町へ出ると、友人の一人に出会いました。しかしアブー・フライラは、自分がとてもひもじくて、食べ物を買うお金がないことを、はずかしくてどうしてもその友人に話せず、ほかのことをたずねました。もしかするとそれをきっかけにして、友人が家へ招(まね)いてくれるかもしれない、とあわい期待をしたのです。
 しかし、その友人はアブー・フライラの気持ちに気づかず、たずねられたことに答えると、急いでどこかへ行ってしまいました。

 その後も、もう一人別の友人に出会いましたが、アブー・フライラはやはり同じ事をたずねただけで、はずかしくて本当のことを言えずじまいで、同じことのくり返しでした。

 そこに預言者(よげんしゃ)ムハンマドが通りかかりました。ムハンマドはアブー・フライラの顔を見るとその心のうちをすぐに察(さっ)し、かれを自分のうちへ連れて行きました。

神様はご存じ

 ムハンマドの家には大きな容器(ようき)いっぱいの牛乳(ぎゅうにゅう)がありました。しかし、ムハンマドはアブー・フライラに、貧(まず)しくて住む家もなく、礼拝所(れいはいじょ)に寝泊(ねとま)りしている人々をみな連れてくるように言いました。それを聞いて、アブー・フライラは内心悲しみました。牛乳はたくさんありましたが、かれらが来て飲んでしまえば、自分の分はほんのわずかしか残らないだろうと思ったからです。しかし、かれはその気持ちをムハンマドに伝えるのもはずかしく、だまって貧しい人たちを呼(よ)びに行き、やがてかれらを連れて戻ってきたのでした。

 ムハンマドは牛乳を、まずその貧しい人たちに飲ませました。その後でアブー・フライラが容器をのぞくと、牛乳はやはりほんの少ししか残っていません。かれが内心がっかりしていると、ムハンマドはやさしくほほえんで、かれにその残りを飲むよう言いました。
 けれど不思議(ふしぎ)なことに、アブー・フライラがその残りを飲むと、わずかしかなかったはずの牛乳で、かれはなぜかおなかがいっぱいになったのでした。


【ハキムのひとこと】

ハキム

 神様はアブー・フライラのひもじい思いと、それをだれにも言えないかれのはじらいをだれよりもよくご存じでした。だからわずかしかない牛乳(ぎゅうにゅう)で、かれを満腹(まんぷく)にしてくださったんですね。預言者(よげんしゃ)ムハンマドは最初からそれがわかっていたので、アブー・フライラよりもっと貧しく、住むところもない人たちに先に牛乳を飲ませ、残りをかれにあたえたのでした。

ひかえめで遠りょがちな人は、困(こま)っていてもはずかしくて、なかなか言い出すことができません。ですから周りの人はそういう人の気持ちを察(さっ)して、自分から手を差しのべなければなりませんね。

 

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