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アラビアもよう
アラブのどうわ


 ■アラブのどうわ 第33回 乳搾(ちちしぼ)り

 昔アラビアに、アブー・バクルという、人々にとても信らいされた立派(りっぱ)な人がいました。かれは、とてもやさしく正直な人としても知られていました。

乳搾り  アブー・バクルは、自分が住む地域(ちいき)の村人たちが家ちくの世話で大変そうなので、いつもかれらを助けて自分もその仕事に加わり、牛ややぎの乳搾(ちちしぼ)りを手伝っていました。
 またかれは、当時のアラビアで良い家がらの人として知られていましたが、自分は質素(しっそ)でつつましい生活をし、多くの人たちを助けました。

 それまでアラビアの国を治めていた預言者(よげんしゃ)ムハンマドが病気で亡(な)くなると、高い知識(ちしき)を持ち、人々に信らいの厚(あつ)いアブー・バクルは、アラビアの新しい長(ちょう)に選ばれました。

乳搾り

 アブー・バクルが長に選ばれたことを知った村人は、かれが立派(りっぱ)な地位についたので、もう自分たちを手伝ってはくれないだろうと思い、こう言ってなげきました。
 「これでもう、わたしたちの家ちくは乳(ちち)を搾(しぼ)ってもらえなくなる。」
 しかしそれを聞いたアブー・バクルは村人にこう言いました。
 「いいえ、わたしはあなた方のために乳搾(ちちしぼ)りをします。わたしは自分の新しい長(ちょう)という立場が、かつての自分の行いを変えてしまわないよう願っているのです。」


【ハキムのひとこと】

ハキム

 泥(どろ)や糞(ふん)のそばでしゃがんで乳搾(ちちしぼ)りをするのは、決して楽な仕事ではありません。そして家ちくは生きものですから、どんなに暑くても寒くても、世話をサボることはできないのです。

 大量の飼葉(かいば)をやり、水を飲ませ、また大きな牛たちを引き連れて放牧に連れて行き、また連れて帰ります。また牛小屋をきれいにしておくために、いつも糞の始末やそうじをしなければなりません。そしてお産を手伝い、仔(こ)をとりあげたりもします。アブー・バクルはそんな村の人たちの苦労を知り、よく手伝いました。

 かれは、国の長(ちょう)になって自分の良い行いが変わってしまうことをおそれ、国の長として重くいそがしい仕事をしても、村人の苦労を忘(わす)れず、家ちくの世話を続けようと決心したのでした。

 

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