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アラビアもよう
アラブのどうわ


 ■アラブのどうわ 第32回 あなたはわたしの兄弟

 昔アラビアの大国に、ウマルという立派(りっぱ)な長(ちょう)がいました。
 ウマルは、信らいできる立派な人たちを選び、遠くの地方を治める知事として派(は)けんしていました。

あなたはわたしの兄弟  ある時ウマルは、マダーインという地方に、ホザイファという名の知事を派けんすることにしました。

 そしてウマルは、ホザイファがその仕事のために旅立つ時、マダーインの人々にあてた手紙をかれにたくして送り出しました。その手紙には、ホザイファに従(したが)うよう、そしてホザイファが暮(く)らしに必要とするものをあたえるようにと、人々への指示(しじ)が書かれていました。

 それからホザイファはロバに乗り、自分の食べ物を持ってマダーインへ向けて出発しました。ロバはそのころのアラビアでは、馬やラクダよりずっと安く、その上、身分の低い者が乗るものと思われており、金持ちや地位の高い人は乗ろうとしなかった動物でした。

 ホザイファがマダーインにとう着すると、連らくを受けていた町の人々がかれを出むかえました。そこでホザイファは、人々に長(ちょう)の手紙を読んで聞かせました。
 人々がホザイファに、「あなたが必要なものをおっしゃってください。」と言うと、ホザイファはそれに答えて、「ここにいる間、わたしの食べものとロバのエサをお願いします。」と言ったのでした。

あなたはわたしの兄弟

 それからしばらくして、ウマルは、知事となったホザイファが以前と同じようにえらぶらず、けんきょにつつましく暮らしているのか、あるいはえらくなって人々にもてはやされ、派手(はで)な暮らしをするようになったのかを知りたいと思いました。そこで使者を送り、ホザイファを呼(よ)び寄(よ)せてみることにしました。

 ウマルはホザイファの本当の様子を見ようと思い、かれが帰ってくる道のかたわらに身をひそめて、じっと待ちました。するとやがてホザイファが、国を出た時と同じ格好(かっこう)で自分のロバに乗り、とぼとぼとやってくるのが見えました。
 それを見るとウマルはとてもうれしくなり、道の真ん中に飛び出してホザイファをだきしめ、「君はわたしの兄弟だ。そしてわたしは君の兄弟だ。」と言ったのでした。


【ハキムのひとこと】

ハキム

 人はえらくなったりお金持ちになったりすると、以前のつつましさやけんきょさを忘(わす)れてえらそうにふるまったり、ほかの人たちを見下したりすることがよくあります。そして必要以上にぜいたくな身なりや暮(く)らしをして、それを目にする貧(まず)しい人たちの心を考えないようになったりします。

 ホザイファは、人々に尊敬(そんけい)される、知事という立派な地位についてもえらぶらず、ぜいたくな暮らしをせずに、一生懸命(けんめい)人々のために働きました。

 どんな大金も立派な地位も、それによって人が良くなるのか悪くなるのか神様にためされているものにすぎないということを、かれがよく知っていたからです。

 

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