昔アラビアの大国に、ウマルという立派(りっぱ)な長(ちょう)がいました。
ウマルは、信らいできる立派な人たちを選び、遠くの地方を治める知事として派(は)けんしていました。
ある時ウマルは、マダーインという地方に、ホザイファという名の知事を派けんすることにしました。
そしてウマルは、ホザイファがその仕事のために旅立つ時、マダーインの人々にあてた手紙をかれにたくして送り出しました。その手紙には、ホザイファに従(したが)うよう、そしてホザイファが暮(く)らしに必要とするものをあたえるようにと、人々への指示(しじ)が書かれていました。
それからホザイファはロバに乗り、自分の食べ物を持ってマダーインへ向けて出発しました。ロバはそのころのアラビアでは、馬やラクダよりずっと安く、その上、身分の低い者が乗るものと思われており、金持ちや地位の高い人は乗ろうとしなかった動物でした。
ホザイファがマダーインにとう着すると、連らくを受けていた町の人々がかれを出むかえました。そこでホザイファは、人々に長(ちょう)の手紙を読んで聞かせました。
人々がホザイファに、「あなたが必要なものをおっしゃってください。」と言うと、ホザイファはそれに答えて、「ここにいる間、わたしの食べものとロバのエサをお願いします。」と言ったのでした。
それからしばらくして、ウマルは、知事となったホザイファが以前と同じようにえらぶらず、けんきょにつつましく暮らしているのか、あるいはえらくなって人々にもてはやされ、派手(はで)な暮らしをするようになったのかを知りたいと思いました。そこで使者を送り、ホザイファを呼(よ)び寄(よ)せてみることにしました。
ウマルはホザイファの本当の様子を見ようと思い、かれが帰ってくる道のかたわらに身をひそめて、じっと待ちました。するとやがてホザイファが、国を出た時と同じ格好(かっこう)で自分のロバに乗り、とぼとぼとやってくるのが見えました。
それを見るとウマルはとてもうれしくなり、道の真ん中に飛び出してホザイファをだきしめ、「君はわたしの兄弟だ。そしてわたしは君の兄弟だ。」と言ったのでした。
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