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アラビアもよう
アラブのどうわ


 ■アラブのどうわ 第28回 えさをかついで

餌(えさ)を担(かつ)いで   

 昔、マダーインという地方に、サルマーンという知事がいました。

ある時、一人の男が、シャームの国からマダーインへと旅をしました。その旅人は家ちくのえさをたずさえて旅をしていたので、マダーインへ到着(とうちゃく)するとすぐに、自分のためにそのえさを運ぶ人をやとおうと思いました。
 そしてあちこち探(さが)しましたが、あたりにそれらしき者は見当たらず、ちょうどそこを通りかかったサルマーンが目にとまりました。旅人はもちろんサルマーンを知事とは知らず、荷を運ぶ人だと思い、「おい、こっちへ来て運んでくれ!」とかれを大声で呼(よ)びました。

そこでサルマーンは、男のために家ちくのえさを肩(かた)にかつぎ、男が命じた宿に向かってそれを運びました。

餌(えさ)を担(かつ)いで

 旅人が家ちくのえさをかついだサルマーンを連れてしばらく行くと、人々がそれを見かけて大変おどろき、旅人に向かって、「おい、その方は知事様だぞ!」とさけびました。
 それを聞いた旅人はあわてふためき、「わたしは知らなかったのです!」と言ってサルマーンに何度もあやまり、すぐに家ちくのえさを自分でかつごうとしました。
 しかしサルマーンは、「いいえ、あなたの宿まで運びます。」と言い、全く気にもとめなかったのでした。

【ハキムのひとこと】

ハキム

 そのころの知事と言えば、今でいう一国の首相(しゅしょう)のようなものです。旅人がサルマーンを見て荷を運ぶ人とまちがえたのは、サルマーンがえらぶって高価(こうか)な服を着ていたのではなく、ふつうの人と同じごく質素(しっそ)な格好(かっこう)をして歩いていたからにちがいありません。サルマーンは、自分の高い地位や人の目など全く気にとめず、旅人のために家ちくのえさを肩にかついで運びました。ほかの人の役に立とうとすることは、だれであれ当然のことだと思っていたからです。その気持ちは、かれが知事であることよりもっと立派(りっぱ)なことですね。

 

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