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昔、マダーインという地方に、サルマーンという知事がいました。
ある時、一人の男が、シャームの国からマダーインへと旅をしました。その旅人は家ちくのえさをたずさえて旅をしていたので、マダーインへ到着(とうちゃく)するとすぐに、自分のためにそのえさを運ぶ人をやとおうと思いました。
そしてあちこち探(さが)しましたが、あたりにそれらしき者は見当たらず、ちょうどそこを通りかかったサルマーンが目にとまりました。旅人はもちろんサルマーンを知事とは知らず、荷を運ぶ人だと思い、「おい、こっちへ来て運んでくれ!」とかれを大声で呼(よ)びました。
そこでサルマーンは、男のために家ちくのえさを肩(かた)にかつぎ、男が命じた宿に向かってそれを運びました。
旅人が家ちくのえさをかついだサルマーンを連れてしばらく行くと、人々がそれを見かけて大変おどろき、旅人に向かって、「おい、その方は知事様だぞ!」とさけびました。
それを聞いた旅人はあわてふためき、「わたしは知らなかったのです!」と言ってサルマーンに何度もあやまり、すぐに家ちくのえさを自分でかつごうとしました。
しかしサルマーンは、「いいえ、あなたの宿まで運びます。」と言い、全く気にもとめなかったのでした。
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