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昔、アラビアの国を治めていたりっぱな長(ちょう)に、ウマルという人がいました。
ウマルは自分の国の人々が無事に暮(く)らしているかどうかたしかめるために、
夜になるとよく供(とも)の者を連れてそっと見回りにでかけたものでした。
その夜もウマルは供を連れて見回りにでかけましたが、街じゅう歩きまわったので少しつかれ、立ちならぶ家々のそばに立ち止まって休みました。
すると近くの家から年取った母親の声が聞こえてきました。その母親はむすめに何か言いつけているようです。よく聞くとどうやらその母親は、明日の朝、売りに行く牛乳(ぎゅうにゅう)に水をまぜるよう言い付けているのでした。水をまぜて牛乳の量をふやし、買う人には、その全部が牛乳だと言ってだまして、たくさんお金をもうけるように言っているのです。
それを聞いたむすめが母に、「わたしたちの長ウマルは、牛乳(ぎゅうにゅう)に水をまぜて売ることを禁(きん)じられたではありませんか?!」と言うと、母は「いったいウマルが今どこにいると言うんだい? かれにわたしたちが見えるわけじゃないんだよ。」と、なおも言いはります。
しかし、むすめはさらにこう言い返しました。
「それでは、お母さんは、人が見ているところでだけ長にしたがえと言うのですか?!」
このやりとりを聞いていたウマルは、むすめの正直さをとてもうれしく思い、朝になるとむすめの名前を調べ、むすめがまだ結婚(けっこん)していないことを知りました。そこでその正直なむすめを自分のむすこのお嫁(よめ)さんにしようと思ったのでした。
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