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昔アラビアに、アブー・ハニーファという学者がいました。
アブー・ハニーファの隣人(りんじん)に一人の若者(わかもの)がいたのですが、かれはいつも遊びに明け暮(く)れては毎晩(まいばん)大声で歌い、アブー・ハニーファはその毎夜(まいよ)のさわぎに迷惑(めいわく)していました。しかしアブー・ハニーファは若者(わかもの)に苦情(くじょう)を言うことなく、そのさわぎにもよく辛抱(しんぼう)しました。
そんなある日、警察(けいさつ)の見回りがその若者(わかもの)のさわぎを聞きつけ、かれをつかまえて牢屋(ろうや)に入れてしまいました。

その夜、いつものように若者(わかもの)のさわぎが聞こえないのでアブー・ハニーファは不思議に思い、人々にたずねて、
初めて若者(わかもの)が警吏(けいり)の男たちに連れて行かれたことを知りました。
そこでアブー・ハニーファは翌朝(よくあさ)早く役所に出かけ、知事に面会を求めました。そして隣人(りんじん)が警吏(けいり)に連れて行かれて牢屋(ろうや)に入れられていることを話し、かれを赦(ゆる)して牢屋(ろうや)から出してやってほしいと、一生懸命(いっしょうけんめい)にとりなしました。自分がめいわくをかけられている隣人(りんじん)のことを心配し、わざわざかれのためにとりなしに来たアブー・ハニーファに敬意(けいい)をはらい、知事はそのとりなしを聞き入れて、若者(わかもの)を解放(かいほう)してやるよう、警吏(けいり)に命じました。
牢屋(ろうや)から出た若者(わかもの)は、毎晩(まいばん)自分がめいわくをかけてきた隣人(りんじん)のアブー・ハニーファが、自分のためにとりなしをしてくれたことに大変驚(おどろ)きました。そしてかれが自分のことを心配し、守ってくれたことをうれしく思い、心から感謝(かんしゃ)しました。そしてその後はまじめに生き、けっして人々にめいわくをかけることはなかったのです。
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