昔アラビアに、アブドッラーという人がいました。
アブドッラーはある時、友人たちと長旅に出ました。
頭にはイマーマと呼(よ)ばれるターバンを巻(ま)き、ラクダに乗っての旅でした。そして、背(せ)が高くてゆれが大きいラクダでの旅につかれた時に、休息を取って乗り換(か)えるため、ロバを一頭連れて行きました。
旅のとちゅう、アブドッラーはラクダに乗りつかれたので、ロバに乗り換えました。すると向こうから、あるベドウィンの男がやってきました。
アブドッラーが、見覚えのあるその男に向かって、「あなたは〇〇のむすこさんではありませんか?」とたずねると、男は「そうです。」と答えました。
するとアブドッラーは急いでロバから降(お)り、頭のターバンをはずして、
「このロバに乗ってください。それからこのターバンを持っていきなさい。」と言って、ロバとターバンをわたしました。
それを見ていた仲間は、砂漠(さばく)での長旅のために必要なその2つを男に差し出したアブドッラーに驚(おどろ)き、言いました。
「休息のためのロバと頭をくくるターバンを、あのベドウィンの男にあげてしまったなんて!!」
するとアブドッラーは仲間たちにこう明かしました。
「『いちばんの孝行者(こうこうもの)は、父親が亡(な)くなってからでも、かれが親しくしていた人の家族によくすることです。』という預言者(よげんしゃ)ムハンマドの言葉を、私は聞いたことがあります。あの人の父親は、ウマル(注*)の友人だったのです。」
*注:ウマルはアブドッラーの父。 |