昔バグダッドに、ファドルという大臣がいました。
ある朝早く、バグダッドの町に住む貧(まず)しい人々は、みな自分の家の玄関先(げんかんさき)に、たくさんお金の入ったふくろが置いてあるのを見つけて、とても驚(おどろ)きました。
いったい、このふくろはどこから来たんだろう? そしてだれが置いていったのだろう……?
みな不思議がっておたがいにたずね合いましたが、とうとうわかりませんでした。

ずいぶん後になってから人々は、そのお金を貧(まず)しい人々の家の戸口に置くよう命じたのが、ファドルだったことを知りました。
ファドルは使いの少年たちに対して、人々が寝静(ねしず)まった夜ふけに、お金の入ったふくろを、バグダッドに住む貧(まず)しい人々の家の戸口に置いてくるよう命じていたのです。そしてお金を置くところを、けっしてだれにも見られてはならないと、厳(きび)しく言いつけていたのでした。
ファドルが人々に知られないようにこっそりとお金を配らせたのは、その行いを、人々にほめられるためのものにしたくなかったからなのです。
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