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アラビアもよう
アラブのどうわ


 ■アラブのどうわ 第17回 「良き友

良き友 

 昔アラビアに、一人の貧(まず)しい男がいました。

 男には、とても気前が良くてやさしい友がおり、困(こま)っている時には、いつでもかれを助けてくれました。

 ある日、その貧(まず)しい男がいつものように友を訪ねると、門番が中に入れてくれません。そこで気を悪くした男は、短い詩を紙切れに書いて門番に差し出し、中にいる友にわたすよう言いました。その詩には、こう書いてありました。

     気前よく差し出す者も かくれれば
                   ケチな輩(やから) と変わることなし

 門番はその紙切れを持って家の中に入っていきましたが、しばらくすると、友からたくされた紙切れと500ディナール入りのふくろをかかえて出てきて、男に手わたしました。紙切れの裏(うら)には友の詩が返事として、次のように書かれていました。

     気前よく差し出す者も 貧(ひん)すれば
                    友に恥(は)じ入り この身隠(かく)さん

良き友

 男はその詩を読むまで、いつも助けてくれるそのやさしい友が、自分と同じようにお金に困(こま)っていることを知らなかったのです。そして自分も生活に困(こま)っているというのに、それでもなんとかしてくれようとする友のやさしさに胸(むね)を打たれました。

 そこで男は、当時国を治めていた人々の長(ちょう)、マームーンのもとへ急ぎ、この友について話し、友の書いた詩と500ディナールの入ったふくろを見せました。するとマームーンはそのふくろに見覚えがあったので驚(おどろ)き、周りの者に、男の友を呼(よ)んでくるよう言いつけました。

 やがて連れて来られた人物を見て、マームーンは目をみはり、かれと次のような会話をしました。

 「あなたは 昨日わたしのところへ来た者ではありませんか?」
 「はい、そうです。」
 「その時、お金に困(こま)っているとわたしにうったえたのではありませんか?」
 「はい、そうです。」
 「だから、わたしはあなたにこのふくろをあたえたのではありませんか?」
 「はい、そうです。」
 「それなのに、友人が詩で援助(えんじょ)を求めたからといって、このふくろを差し出した
  のですか?!」
 
すると、その友はマームーンにこう答えました。
 
 「そうです。わたしが昨日、生活に困(こま)っているとうったえたのは本当のことで、うそ
  はありません。しかし、あなた様がわたしを助けてくださったように友を助けなければ、
  わたしは神様に対して恥(は)ずかしいと思ったのです。」
 
 それを聞いてマームーンはその男をほこりに思い、「君はアラブでいちばん、気前の良い男だ。」と言ってその心の広さをたたえ、褒美(ほうび)として男にたくさんのお金をあたえたのでした。

【ハキムのひとこと】

ハキム

 貧(まず)しい男を家に招(まね)き入れようとしなかったやさしい友は、その時、決してかれをきらっていたわけではありません。自分も生活に困 (こま)っていたので、同じように困(こま)っている友人をじゅうぶんに助けてあげられないことを悲しみ、会うのをためらっただけなのです。

 しかし友人の困(こま)っている姿(すがた)を思って、結局、自分がマームーンからあたえられた大事な500ディナールを友に差し出します。

 自分に何も問題がないときに困(こま)っている人を助けることも、 もちろんとても立派(りっぱ)なことです。しかし自分が困(こま)っている時でも、同じように困(こま)っている人のことを忘(わす)れず、どうにか助けようと努力することは、もっと立派(りっぱ)なことですね。

 

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