昔、アラビアの大国(たいこく)を治めるウマル・ビン・アブディルアズィーズという立派(りっぱ)な長(ちょう)がいました。
ある夜、ウマルは人々が無事に夜を過(す)ごしているかどうか、供(とも)の者を連れて見回りに出かけました。
かれらが町を巡回(じゅんかい)し、それから礼拝所(れいはいじょ)の中へ入って行くと、夜ふけなので真っ暗で何も見えず、ウマルは足元にねていた男の足につまずいてしまいました。するとねむりを覚まされたその男は頭を上げて、「頭がおかしいのか、お前は?!」と言いました。するとウマルはそれに答えて、「いいえ。」と言いました。
その時ウマルの供(とも)の者は、その男の無礼な言葉に腹(はら)を立て、かれをつかもうとしたのですが、ウマルはそれを止めてこう言いました。
「やめなさい 。かれがわたしに、おまえは頭がおかしいのかときいたので、わたしはいいえ、と答えただけのことです。」
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