預言者(よげんしゃ)ムハンマドが亡(な)くなった後で、多くの人たちがかれの教えを学ぼうと努力しました。そして学者たちはそのために、ムハンマドが残した言葉をまだ覚えている人たちをたずね歩いたものでした。
そんな学者の一人が、預言者(よげんしゃ)ムハンマドの残した言葉を集めて書き残すために、ほうぼう旅していた時のことです。かれは、遠く砂漠(さばく)に住むあるベドウィンの男が、ムハンマドの言葉を覚えていると聞きつけ、それをぜひ書きとめたいと思い、その男のところへと旅に出ました。
学者は、ほうぼう探(さが)し歩いて、やっとその男の家へたどり着きました。家の前にいる男に近づこうとすると、男は上着のはしを内側に折って、それを遠くにいる馬に見せ、さかんに馬をよんでいます。どうやら馬がにげ出したので、上着を折りこんだその中にえさがあるように見せて、おびきよせているようでした。馬は男のしぐさを見てにげていた足を止めました。男の上着の内側に、いつものようにえさが入っていると思ったのです。そしてそのえさを食べようと、男のところにかけもどって来ました。すると、男はすかさず馬のなわをとらえ、小屋へ入れてしまいました。
その様子を見ていた学者は男に近づき、「あなたはその服の内側に本当にえさを持っていたのですか?」とたずねると、かれは答えて「いや、つかまえようと思ってだましただけなのだ。」と言いました。
それを聞いた学者は腹(はら)を立てて、かれのもとを立ちさろうとしました。すると男はあわてて後ろから学者をよび、「預言者(よげんしゃ)の言葉を聞いてから帰りなさい。」とさけぶと、学者はこう言いました。
「わたしはあなたの言葉を決して信じません。あなたは家畜(かちく)にうそをついたではないですか?! 私はうそつきから預言者(よげんしゃ)の言葉を聞こうとは思いません。」 |