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アラビアもよう
アラブのどうわ


 ■アラブのどうわ 第12回 「少年と盗賊(とうぞく)」


少年と盗賊(とうぞく)
 昔、アラビアのある少年が、バグダードへ勉学の旅に出かけようとしていました。
 
出発前に少年のお母さんは、旅の費用として40ディナールをかれにわたしながら、こう言いました。「息子(むすこ)よ、何事にも決してうそをつかないとわたしに約束しておくれ。」
 すると、少年はお母さんにそのことをしっかりと約束し、キャラバン隊といっしょに旅に出ました。
 
 キャラバン隊が砂漠(さばく)を横切っていると、どこからか盗賊団(とうぞくだん)があらわれ、かれらをおそいました。盗賊(とうぞく)たちはキャラバン隊のお金や、商売のための品物をみなうばってしまいました。そして盗賊(とうぞく)の一人はあたりを見回し、ふと少年に目をとめ、こう問いただしました。
 「お前、何か持っているか?」
 すると少年はそれに答えて、「はい、40ディナール持っています。」と言いました。
 それを聞くとその盗賊(とうぞく)は大声で笑いました。かれは、少年がまさかすぐ本当のことを言うとは思わなかったので、はじめは少年が冗談(じょうだん)を言っているか、または頭がおかしいか、どちらかだと思ったからです。そこで、その盗賊(とうぞく)は少年を、自分たちの首領(しゅりょう)のところへ連れて行き、事のいきさつを話しました。

少年と盗賊(とうぞく)
 首領(しゅりょう)が少年に、「いったい、どうしてばか正直に本当のことを言ったのだ?」ときくと、少年はこう答えました。
 「ぼくはお母さんと、決してうそをつかないと約束しました。
 だから、それをやぶってお母さんをうらぎってはいけないと思ったんです。」

 盗賊団(とうぞくだん)の首領(しゅりょう)は、少年の真っすぐな答えに心を打たれ、心の中でこうつぶやきました。
 「この少年は、母親との約束をやぶらないために、旅のための有り金をみなあきらめたというのに、このおれは神様の教えさえも気にとめずに盗(ぬす)みを働き、神様をうらぎり続けている……。」

 こうして盗賊団(とうぞくだん)の首領(しゅりょう)は、人をおどし、ものを盗(ぬす)んで平気でいる自分を、心からはずかしく思い、仲間たちに命じて、お金や荷物をキャラバン隊に返したのでした。

【ハキムのひとこと】

ハキム

 うそをつくことは、人をうらぎり、人の心をきずつけ、そして人からの信頼(しんらい)を失うことです。そして人からの信頼(しんらい)は、正直な言葉や行いによってしか手に入りません。

 どんなに大金を積んでも、決して買いもどすことはできないものなのです。

 

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