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アラビアもよう
アラビアン・ナイト


 ■アリババと40人のとうぞく 第1回

アリババと40人のとうぞく

 アラビア村にも夏がやって来ました! カンカンと太陽が照り返す夏の昼間は、わたしたち人間だけではなく、草花や鳥たちにとっても、できるならば木かげを探(さが)して休みたい……。けれど、アッラーは、そんな中にも小休止をめぐんでくださり、暑い夏でも早朝は美しくさわやかです。今のうちに、とばかり、鳥たちも早くから目を覚まし、陽気にさえずりながら、仲間たちとうれしそうに飛び回っています。

 泉(いずみ)のそばの木かげにはハキムおじいさんがこしかけ、鳥たちの陽気な朝のあいさつに耳をかたむけています。すると、夏休みで朝早くから遊びに集まった子どもたちがかけよってきて、口々にあいさつをしました。



 ラナ
   
アッサラーム・アライクム、ハキムおじいさん。


ハキム
ワ・アライクム・アッサラーム、すばらしくいいお天気だね。


翔くん
サバーフルハイル、ハキムおじいさん。


ハキム
サバーフンヌール、翔(しょう)。アラビア語の朝のあいさつを覚えたんだね? 本当に上手だよ。立派(りっぱ)なもんだ。


ザキくん
アッサラーム・アライクム、カイファ・ハールカ(お元気ですか)?


ハキム
アナ・ビハイリン(わたしは元気です)、アルハムドリッラー。


翔くん
「アルハムドリッラー」って、アラビアの人たちがよく言う言葉だよね? それってどういう意味なの?


ハキム
「アルハムドリッラー」とは、「アッラーのおかげで」という意味だよ。日本の「おかげさまで。」という言い方に少し似(に)ているね。アラビアの人だけではなくって、ほかの地域(ちいき)の人でも、ムスリムはみなよくこの言葉を使うのさ。今みたいに、「元気です、アルハムドリッラー。」って言ったり、楽しみにしている遠足なんかの日の朝に、今日みたいなすばらしいお天気にめぐまれたときなども、アッラーに感謝(かんしゃ)して、思わず「アルハムドリッラー」と言う言葉が出るものなんだよ。


翔くん
ふ〜ん。ムスリムは毎日いろんな美しい言葉を使うんですね。いい言葉だから、ぼくも今日から使ってみようかな。


彩ちゃん
ところで、ねえ、ハキムおじいさん。この前テレビで見たんだけれど、映画(えいが)にもなった「アラジンとまほうのランプ」って、アラビアのお話なんでしょう?


ハキム
そうだよ。あれは「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」っていう有名なおとぎ話集の一つなんだ。アラビアンナイトの中には、日本でもよく知られているお話がまだほかにもあるよ。たとえば、「シンドバッドのぼうけん」とか「アリババと40人のとうぞく」とかね。


翔くん
なんか題名だけでもわくわくしちゃいそうな感じ! ぼくたち今、学校が夏休みだから、ハキムおじいさん、その中から何かぼくたちにお話を聞かせてくれませんか?


ハキム
それはいい考えだね! それじゃあ、「アリババと40人のとうぞく」のお話でもしようかな。


  翔
     
ホント? ありがとう、うれしいな!


ザキくん

ぼくは、おうちでお父さんに話してもらったことがあるよ。でも何回聞いてもおもしろいから、翔くんたちといっしょに、ぼくも聞きたいな。


ラナちゃん
わたしも!


ハキム
よし! それじゃあ、さっそく始めるとするよ。
 こうして、ハキムおじいさんは子どもたちにせがまれて、「アリババと40人のとうぞく」のお話を始めることにしたのでした。
                


 昔々、二人のわかい兄弟がおりました。兄の名はカ−スィム、弟の名はアリババと言いました。やがて兄弟は大人になり、カ−スィムは金持ちの女性(じょせい)と、そしてアリババは少しもお金を持っていない貧(まず)しい女性と結婚(けっこん)しました。アリババと妻(つま)はとても小さな家に住み、その手元にはやっと生きていけるだけの、わずかな食べ物と飲み物しかありませんでした。

 アリババは毎日薪(まき)をとりに森に行き、集めた薪を3頭のやせたロバの背(せ)にのせて持ち帰り、町の通りを大声あげて売り歩きました。そうすると女たちがみな家から出てきてその薪を買うのでした。

 アリババはこんなぐあいに暮(く)らしを立てていました。アリババと妻は貧しい暮らしをし、その生活にはぜいたくのかけらもありませんでした。くる日もくる日も、かれは妻と息子(むすこ)のためにじゅうぶんなお金をかせぐことができないでいました。

 ある日、アリババが薪(まき)を切っていると、馬に乗った男たちの集団がこちらへ向かってやって来るのが見え、とてもおどろきました。その男たちは、決して歓迎(かんげい)できるような様相ではなかったのです。そこでアリババはやせロバたちの耳にささやきました。
「かれらがわたしに気がつかないといいのだが。おそらくかれらはわたしから薪を取り上げるだろう。おまえたちはここからはなれてかくれていなさい。わたしもこの木に登ってかくれることにしよう。かれらが行ってしまってから、おまえたちを呼(よ)んでやるから。」

 こうしてアリババは木によじ登り、馬にまたがってかけてくる男たちをひそかに見つめていました。すると、とつぜん、かれらの先頭の者がさけびました。
「止まれ! 目指すはここだ……この丘(おか)の上だ!」

 この呼(よ)びかけを聞くと、馬に乗っていた者はみな馬の背(せ)から飛び降(お)りました。
 その時アリババは、それらの馬の一頭一頭に大きなふくろが積まれているのに気がつきました。それから男たちはふくろを馬の背から降ろし、各自、ふくろを背負(せお)って運びだしました。

 馬たちはその場からはなれた場所に連れて行かれました。そして男たちは荷物を背負って丘を登り、とうとう、アリババが枝(えだ)の間に身をかくしている木のそばの、大きな岩のところまでやって来ました。アリババがそっと男たちを数えてみると、その数は全部で40人でした。



 男たちは目の前に立ちふさがる大きな岩を取り囲みました。そしてかれらの一人が「開けゴマ!」とさけぶと、すぐにその岩のとびらが開いたのです。さけんだその男が最初に中に入り、それから残りの者たちがその後について行くのが見えました。そして最後の男が入るとすぐに、開いていたとびらが閉(し)まり、元にもどりました。

 そこでアリババは小さな声でつぶやきました。
「なんとかすぐ家に帰りたいものだ。でも今にもかれらが出てきて、わたしを見つけるかもしれない。だからもう少しだけここにいることにしよう。」

 かれはそのまま枝(えだ)の間にかくれて様子を見ることにし、またひとりごとを言いました。
「でも、どうして今まであのとびらに気がつかなかったのだろう? あれを開いたのはいったい、だれだろう? あのとびらは、どうくつへの入り口なのだろうか? なぜ、男たちはあれらのふくろを中に運んだのだろう? とても大きなふくろだったけど、あの中には何が入っているのだろうか? お金でいっぱいなのだろうか? あの男たちはとうぞく団なのだろうか? もしそうだとしたら、今下りるのは危険すぎる。かれらはあれから中に入ったままだけれど、いったい、いつ出てくるのだろう?」

 アリババがこのように思いにふけっていると、やがて男たちが出てきました。 しかし、かれらは先ほど持っていたふくろを一つも持っていません。そして、男たちがみな外に出ると、かれらの首領(しゅりょう)が「閉(と)じよゴマ!」とさけびました。すると、すぐに岩のとびらは閉じたのです。それから男たちは馬の方へ行き、その背(せ)に飛び乗ると、急いで帰って行きました。
                


翔くん
アリババはつかまらなかったんだね、ああ良かった! アルハムドリッラー。


彩ちゃん

40人ものとうぞくから身をかくしていたんですもの、生きたここちがしなかったと思うわ。それにとうぞく団の首領(しゅりょう)って、ホントにこわそう!


ザキくん
岩のとびらを開く秘密(ひみつ)のじゅもん、すごく変わっていておもしろいだろう?


ラナちゃん
「開けゴマ」は、アラビア語では、「イフタハ・ヤー・スィムスィム!」って言うのよ。


ハキム
アリババもロバたちもあやういところだったね。でも何とか見つからずにすんでホッとすると、アリババはあの岩をどうしても自分で開けてみたくなったのだよ。
                


 アリババは木から急いで降(お)りて岩にかけより、あの男がしたように「開けゴマ!」とさけんでみました。すると、とびらが開き、中をのぞくと深(ふか)いどうくつが見えました。そしてそこにはとうぞくが積み上げていったふくろが見えたのです。
 しかし、おどろいたことに、そのどうくつの中にはそれらのふくろだけではなく、そのほかにもたくさんのものがありました。金や銀、宝石(ほうせき)、高価(こうか)な絹(きぬ)の衣しょうなどなど……。
 そこでアリババはこうつぶやきました。
「ぼやぼやしてはいられない。男たちが帰ってきて、わたしがここにいるのが見つかったら、きっと殺されてしまうだろう。急いでどうくつのすみずみまで行って、すべての品物を調べてみよう。」
 かれはどうくつの中をあちこち回り、男たちのふくろを開けて調べました。すると、どのふくろもお金でいっぱいだったのです。

 アリババは、すぐにお金の入った一番大きなふくろをとびらの方へと引きずって行きました。かれがどうくつに入った後でとびらは閉(し)まっていたのですが、もう一度「開けゴマ!」とさけぶとすぐに開いたので、かれは急いで外に出ました。それから、「閉(と)じよゴマ!」と言うと、とびらは閉まりました。

 アリババはかれの3頭のロバを見つけるのに、たいして苦労しませんでした。
そのあわれなものたちは近くの木の間で、かれをじっと待っていました。アリババは、すぐにその背(せ)にふくろをのせ、薪(まき)でそれをおおいました。こうしてふくろを人目からかくしたので、だれもそれに気づくことはなかったのです。そしてアリババはそれから無事家路についたのでした。
                


彩ちゃん
ああ、良かった。アリババと家族は大喜びでしょうね。


翔くん
これでもう貧(まず)しくはなくなったんだね。食べ物も飲み物も着る物も、これからはじゅうぶんに買えるね。


ラナちゃん
いいえ、まだ物語は終わっていないのよ。


ザキくん
そうさ。これからがもっとおもしろいところなんだから。


ハキム
その通り! それじゃあ、この続きはまた明日の朝するとしようかな、インシャーアッラー。


翔くん
ええ〜! 明日までお預(あず)けなの〜? 待ちきれないよ!


ハキム
楽しみは少しずつ毎日あったほうがいいだろう? 3時のおやつみたいにね。夏休みはたっぷりあるんだから、ゆっくり楽しもうじゃないか。


彩ちゃん
それはそうだわ。ところでハキムおじいさん、さっき、「インシャーアッラー」って言ったでしょう? あれはどういう意味?


ハキム
「インシャーアッラー」という言葉もムスリムがよく使う言葉さ。
「アッラーがお許(ゆる)しになれば」っていう意味なんだよ。わたしたちは未来の時間をアッラーからいただくのだからね。ムスリムはそのことをアッラーに感謝(かんしゃ)して、先の話をするときには必ず、「インシャーアッラー」って付け加えるんだよ。



彩ちゃん
ふ〜ん。それじゃあ、ハキムおじいさん、また明日、インシャーアッラー。


翔くん
ぼく、とっても楽しみだよ。じゃあ明日、インシャーアッラー。


 ラナ
   ザキ
インシャーアッラー。アッサラーム・アライクム。


ハキム
ワ・アライクム・アッサラーム。みんな、気をつけて帰るんだよ。

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