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アラビアもよう
アラビアン・ナイト


 ■アラジンとまほうのランプ 第3回

アラジンとまほうのランプ

 秋のそよ風が木々の葉をゆらしている中、ハキムおじいさんは木のかげにすわって目を閉(と)じています。夏の暑さから解放(かいほう)され、冬の寒さはまだやって来ない、この気持ちの良いさわやかさが、ハキムおじいさんをまどろみの世界へとさそったようです。



 ラナ
   
アッサラーム・アライクム、ハキムおじいさん! カイファ・ハールカ?


ハキム
ワ・アライクムッサラーム、ラナ、彩(あや)! アナ・ビハイリン、アルハムドリッラー。あまりにそよ風が気持ちよくて、ついうとうとしてしまったよ。やあ、翔(しょう)とザキも来たんだね、アッサラーム・アライクム、今日も元気かい?


      ザキ
ワ・アライクムッサラーム。はい、とっても元気です、アルハムドリッラー!


翔くん
今日は、アラジンのランプにはどんな力があるのかわかるんでしょう? だからぼく、とても楽しみにして来たんです。


ザキくん

「アリババと40人のとうぞく」のお話では、「開けゴマ!」って言うと秘密(ひみつ)のとびらが開いたでしょう? だから、アラジンのランプにも何かそんなキーワードがあるのかな?


ハキム
さあ、どうかな? でもランプの秘密(ひみつ)は少し違(ちが)うようだよ。
たしか昨日は、アラジンが命からがらどうくつから家に逃げ帰って、つかれてぐうぐうとねむってしまったところまでだったね。それじゃあ、続きを話すとしようか。
                
 アラジンが目を覚ますと、お母さんがやさしくそばにいて、こう言いました。
「おまえはおなかがすいているに違(ちが)いないね。わたしは今から市場へ行ってつむいだこの綿(めん)を売り、おまえの食べるものを買ってこようと思うよ。」

 しかしアラジンはそれを聞いて、「母さん、綿を売らないで、このランプを売ればいいよ。これはうちにはいらないし、このランプのせいでぼくはもうじゅうぶんくたびれたのだから。」と言うと、服の中からランプを取り出し、お母さんにわたしました。
 そこでお母さんは、「いいでしょう。」と言ってそれを売ることにし、こう言いました。
「でも、このランプはずい分と古いものねえ。みがいてきれいにしたら、もっといい値(ね)で売れるでしょうよ。」

 お母さんは布切れを持ってきて、ランプをみがこうと思いました。そして、ひとふきしたかしないかのうちに、とつぜんけむりがたち、家の中が光で輝(かがや)きました。その光は、ランプの中から現(あらわ)れた大きな魔人(まじん)の体から出て、2人を照らしていたのです!



 その魔人はこうさけびました。
「わたくしは、このランプを所有する御方(おかた)の召使(めしつか)いでございます。どうかお命じくださいませ。何でもおこたえいたします。」
 しかし、アラジンのお母さんは恐(おそ)れてためらっているので、アラジンが代わりに、「わたしたちに食べるものを持って来てくれ!」と言いました。
 すると魔人はしばらく姿(すがた)を消し、それからおいしそうなごちそうが、銀皿にたくさん並(なら)べられた食卓(しょくたく)を抱(かか)えてもどってきて、それからすぐにランプの中へと帰っていきました。

 アラジンとお母さんは、驚(おどろ)いて何も言わずにその食べ物に近づきました。2人とも目の前で起きたことが信じられなかったのです。しかし、やがて2人はそれらの食べ物を食べ終わりました。それから、お母さんは注意深くそれらの銀皿をまとめ、アラジンはそれを市場でいい値(ね)で売りました。かれらはそれで、2か月分以上の生活費をじゅうぶんまかなうことができたのです。

 このようにして、暮(く)らしのお金が底をつくたびに、アラジンはランプをこすり、そのたびに召使いの魔人(まじん)が銀皿に入った食べ物を持ってくるようになったのでした。

 何度も銀皿で商売をしているうちに、アラジンは段々(だんだん)と、その銀皿の価値(かち)がわかってきました。宝石(ほうせき)商たちはその銀を手に入れようと、競(きそ)って値(ね)を上げるのです。かれらがそれまで見たことのないような純度(じゅんど)の高いその銀のために。

 また、かれらがとても高い値で店に出している宝石類も、アラジンの目をひきました。それらは、美しさから言っても大きさから言っても、かれがどうくつから持ち出した、木々にぶら下がっていたあの実と比(くら)べれば、まったくたいしたものではなかったのです。
 それを見てアラジンは、自分がとても大きな財産(ざいさん)を持っていることを悟(さと)ったのですが、そのことはまだ秘密(ひみつ)にしておくことにしました。

 こうして、幸せで平穏(へいおん)な年月が過(す)ぎていったのですが、ある日のこと、アラジンは市場にいた時、王さまの一人娘(むすめ)が侍女(じじょ)たちや護衛(ごえい)の者たちとともに、買い物をしているのを見て、一目で恋(こい)に落ちてしまったのです!

 アラジンは心が乱(みだ)れてぼんやりしたまま家に帰ってきました。そこでお母さんが、「息子(むすこ)や、どうしたのだい?」とたずねると、かれは心の中にあることを告白しました。
「母さん、ぼくは王さまの娘と結婚(けっこん)したいんだ。わたしのために、かの女との結婚の申しこみをしてきてください!」
 それを聞いたお母さんは笑い出し、こう言いました。
「何てことだろうね、息子よ! おまえはきっと頭がどうかしたに違(ちが)いない。王女さまと結婚するなんて、おまえは一体何者で、何を持っていると言うの?」

 するとアラジンはそれには答えず、自分の部屋に入り、それからどうくつで着ていた服を持って出てきて、驚(おどろ)いているお母さんの目の前に、そのポケットにあるものを全部出して見せたのです。そしてかれはこう言いました。
「母さん、明日、王さまのところへ行って、わたしのために、王さまの娘(むすめ)との結婚を申しこんできてください! わたしからの贈(おく)り物としてこれらの宝石(ほうせき)を差し出せば、王さまもきっと良い待遇(たいぐう)をして下さることでしょうから。」

 こうして翌日(よくじつ)、アラジンのお母さんは、ふくろに入ったアラジンの宝石を持って、王さまの城(しろ)へ向かいました。
王さまは週日のほとんどを、用件(ようけん)や頼(たの)みごとのある者たちと面会して過(す)ごしていました。そこでアラジンのお母さんもすわって自分の順番を待ちました。

 やがて侍従(じじゅう)がかの女を呼(よ)び、王さまの前に出るように言うと、かの女はふるえながら、遠くからこう言いました。
「国王へいか、わたしのお願いは奇妙(きみょう)なものでございます。ですから先に、そのことを謝(あやま)っておきたいと思います。ですが、わたしの息子(むすこ)がその願い事をあきらめようとせず、わたしがここでそれをお願いしてくれなければ、自分は気が狂(くる)ってしまう、などと言うものですから……。」

 すると王さまはかの女を安心させ、このように言って励(はげ)ましました。
「あなたの願いを言いなさい、ご婦人(ふじん)よ。何も恐(おそ)れることはない。」
 そこでアラジンのお母さんは、おそるおそるこのように言ったのです。
「国王へいか、わたしの息子は、自分のために、へいかのお嬢(じょう)さまとの結婚(けっこん)を申しこんできてほしいと言うのでございます!」
 すると王さまは思わず笑い出し、話の流れを変えようと思って、とりあえずかの女にこうたずねました。「ところで、そのふくろの中には何が入っているのだね?」
 するとかの女は、こう言いながら王さまにふくろの中のものを差し出しました。
「息子は、これをあなたがたにお贈(おく)りすることを光栄に思っております!」

 王さまは、ふくろいっぱいにつまったその輝(かがや)く宝石(ほうせき)の美しさに驚(おどろ)き、すっかり気に入りました。かれはそのような宝石をかつて見たこともなかったからです。そこで、そばにひかえていた宰相(しんしょう)に、このようにささやきました。
「宰相よ、このような驚くべき高価(こうか)な宝石を差し出すことができるかの女の息子は、わたしの娘(むすめ)に結婚を申しこむにふさわしい人物だと思われるが、君はどう考えるだろうか?」

 宰相はしばらく考えていました。じつはこの宰相は、自分こそが王女と結婚したいと強く望んでいたのです。そこでかれは王さまに、ひそかに何事か言いました。

すると、王さまはアラジンのお母さんのほうに向き直り、こう答えました。
「宰相の言うとおりである! われわれに近くありたいと望む者は、この宝石よりもさらに多くの物により、自分がそれにふさわしい者であることを証明(しょうめい)しなければならない。そう、たとえば、あなたが持ってきたそのふくろの40個分ぐらいのものは差し出さなければ。もしもあなたの息子(むすこ)がそうできるというのであれば、その時にはわたしも、本当にわが娘(むすめ)と結婚(けっこん)させたいと思うだろう。」

 ここで、しっと深い宰相(しんしょう)がふたたび王さまに何かささやくと、王さまはさらにこう続けました。
「うん、そうだな……。それからあなたの息子は、わたしの娘(むすめ)のために、われわれの城(しろ)の豪華(ごうか)さに負けないような住まいを、この城のすぐそばに建ててやらなければならない。それも、明日の夜までに。」

 アラジンのお母さんは、このとんでもない求めは、つまり断(ことわ)りの意味なのだと受け止め、悲しい気持ちで家にもどりました。しかしその後、がっくりした顔ではなく、うれしそうな顔でスルタンの求めを聞き入れたアラジンを見て、お母さんはとても驚(おどろ)いたのです!

 アラジンはさっそくランプに向かい、それをこすりました。するといつものように、光の中にランプの魔人(まじん)が現(あらわ)れ、こう言いました。
「やってまいりました、ご主人さま!」

 アラジンは魔人(まじん)に向かってこう言いました。
「ランプの召使(めしつか)いよ、よく聞きなさい! わたしは、宝石(ほうせき)がいっぱいにつまったふくろ40個と、それを運ぶ召使い40人がほしいのだ。それから、わたしのために、将軍(しょうぐん)が着るような豪華(ごうか)で立派(りっぱ)な衣しょうを用意してくれ。それと最も良い馬、そして100人の騎兵隊(きへいたい)と1000人の歩兵隊からなる従者(じゅうしゃ)たち、それから母のために最も美しい装飾(そうしょく)品と衣しょうと20人の侍女(じじょ)たちを。また、わたしたちに4万ディナールの金貨を別に持たせてくれ。」

 魔人はそれを聞くと、「かしこまりました!」と言いましたが、アラジンは魔人が姿(すがた)を消す前にかれをもう一度呼(よ)び、こう言いました。
「待ちなさい。それから、王さまの城(しろ)のそばに、宮殿(きゅうでん)を建ててほしいのだ。人々が見たこともないような豪華(ごうか)で美しい宮殿を。これらすべてを、明日の朝までに用意してくれ!」



 さて、翌朝(よくあさ)になり、王さまは城の窓から外に目をやり、昨日まではなかったものを目にして、とても驚(おどろ)きました! そこには、城が ―― いえ、素晴(すば)らしく豪華で美しい宮殿が建っていたのです。

 しばらくすると、王さまの耳には、段々(だんだん)と近づいてくる騒動(そうどう)の音と、集まってきた人々の声が聞こえてきました。そこでその騒動に目をやると、そこには、朝の日差しを受けてキラキラと光り輝(かがや)くかぶとや剣(けん)を身につけた兵士たちの集団や、輝く宝石がいっぱいにつまったふくろを抱(かか)えて歩く、長身で引きしまった体つきの従者(じゅうしゃ)たちがおり、その後ろには、美しい顔をした若者(わかもの)が大きな馬に乗ってこちらに向かっています。
 集まってきた人々にディナール金貨をばらまきながら。
 王さまには、もうそれ以上の説明は必要ありませんでした。かれはアラジンを娘(むすめ)むことして喜んで受け入れたのです。

 それから数日のうちに、アラジンと王女の結婚(けっこん)の祝宴(しゅくえん)が用意されました。祝宴には王国のあらゆる場所から人々がお祝いにかけつけました。こうしてアラジンと花嫁(はなよめ)は、きらびやかで広大な宮殿(きゅうでん)の中で、幸せに愛し合って暮(く)らしました。

 アラジンはそれからも、自分の財産(ざいさん)を人々におしみなく差し出し、貧しい人々を助け、また金持ちには贈(おく)り物をし、すべての人々に愛されました。
 また、アラジンは国王軍を結成し、自分がそれを指揮(しき)して、敵(てき)との戦いに勝利しました。そのため、王さまはかれのことを、ひいでた将軍(しょうぐん)として、また知恵(ちえ)ある相談役として、そして信頼(しんらい)のおける娘むことして、たのもしく思っていました。
                


ラナちゃん
ランプの魔人(まじん)、すごいんだね、何でも言うことを聞いてくれるなんて!
わたしもそんなランプほしいな。


彩ちゃん
わたしも! それにアラジンが王女さまと結婚(けっこん)できたなんて、本当にびっくりしたわ。
それもみんなまほうのランプのおかげね。


ザキくん

そう言えば、ハキムおじいさん、あの悪い魔術師(まじゅつし)はもう東部へ帰っていったのだから、アラジンは安全なんですよね?


ハキム
いや、それがそうでもないんだよ。


翔くん
えっ?! あの魔術師(まじゅつし)、まだ出てくるの? アラジンもお母さんもやっと幸せになれたっていうのに。


ハキム
そうなんだ。でも、この続きはまた明日にしようじゃないか、インシャーアッラー。みんな気をつけて帰るんだよ。アッサラーム・アライクム!


      

 ラナ   ザキ
シュクラン、ワ・アライクムッサラーム!

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