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アラビアもよう
アラビアン・ナイト


 ■アラジンとまほうのランプ 第2回

アラジンとまほうのランプ

 アラビア村では、今日もハキムおじいさんが泉(いずみ)のそばの木の下にすわり、秋風にふかれながらさまざまな木の葉の色合いをながめて、目を楽しませています。
 夏のギラギラした激(はげ)しさとは打って変わって、秋はなんと美しい季節だろうか、と思いながら。そこに、今日も学校帰りの子どもたちが駆(か)けてきました。



      ザキ
アッサラーム・アライクム、ハキムおじいさん! カイファ・ハールカ?


ハキム
ワ・アライクムッサラーム! アナ・ビハイリン。君たちは今日も元気そうだね、アルハムドリッラー。


ザキくん

ハキムおじいさん、さっき何をながめていたんですか?


ハキム
ああ、あの木の葉の色を見てごらん。緑だった木の葉がいつのまにか少しずつ赤く染(そ)まっていっているよ。冬になる前のつかの間の美しさだね。秋は春のように芽が出て花が咲(さ)く季節ではないけれど、その代わりにこんな特別な美しさがあって、素晴(すば)らしいじゃないか、スブハーナッラー!


翔くん
ハキムおじいさん、今なんて言ったの? スブハーナッラー? それ、どういう意味?


ハキム
「スブハーナッラー」は、「神さまは素晴らしい」って、ほめたたえる言葉だよ。ムスリムは、何か不思議なものを見たり、自然の神秘(しんぴ)や美しさに感動したりした時に、この言葉を言うのだよ。


翔くん
どうして感動したり不思議に思ったりすると神さまをほめるの?


ハキム

どんな不思議なものも、美しいものも、みな神さまの手によって創(つく)られたり、用意されたりしているからなのさ。だから、「こんなきれいなものがこの世にあるなんて、それを創られた神さまは本当にすごい!」って言うような意味で、この言葉を使うんだよ。


翔くん
そうか、なるほど! 本当にきれいな言葉だね。


彩ちゃん
アッサラーム・アライクム、ハキムおじいさん! ザキ君たち、もう来てたのね。


ラナちゃん
アッサラーム・アライクム、ハキムおじいさん! わたしと彩(あや)ちゃんも「アラジンとまほうのランプ」の続きを早く聞きたくて、学校から急いで来たんです。


ハキム

ワ・アライクムッサラーム、彩、ラナ! 心配しなくても、今すぐに話してあげるよ。昨日は、アラジンがにせの叔父(おじ)さんにだまされてすっかり信用してしまうところまでだったね。
それじゃあ、続きを話すとするかな。

                
 ある日、にせの叔父(おじ)さんは、町はずれやその近辺のことをよく知っておくために、自分と一緒(いっしょ)に城壁(じょうへき)の外に出て郊外(こうがい)を回ってみないか、とアラジンに言いました。そこでアラジンは男と一緒に町の城壁から出てみることにしました。

 2人は砂漠(さばく)や岩山を越(こ)え、長い間歩きました。そしてとうとうあたりは暗くなり、かれらはつかれきってしまいました。町の明かりもはるか遠くになってしまったので、アラジンは男にこう言いました。
「町にもどらないのですか、叔父さん! ぼくはもうこれ以上歩けない。」
 しかし男はアラジンを無視(むし)し、やがて立ち止まって厳(きび)しくこう言いました。
「わたしたちはここで夜を明かすのだ。だから薪(まき)を集めて来るがいい!」

 それから2人は火をたき、暖(あたた)まるためにその近くにすわりました。すると男はすぐに何やら奇妙(きみょう)なじゅもんのようなものを唱え始め、また、砂(すな)の上に何かわからない印を描(えが)き始めました。アラジンはそれを聞き、またそれを見て驚(おどろ)き、自分の叔父だというこの人物のことを、しだいにあやしく思い始めました。

 するととつぜん、小山や丘(おか)にかかったかみなり雲が大きな音を発し、2人の足元の大地がぐらぐらとゆれました。それからもうもうと立ちこめたけむりの大きなかたまりが2人をおおい、激(はげ)しく風がふきあれました。そしてそのあらあらしい風は、まるでその下の何かをおおっているかのような大きな平たい岩の上から、砂を巻(ま)き上げました。



 魔術師(まじゅつし)は欲(よく)深そうに目をぎらぎらさせ、その岩を指さして、アラジンに厳(きび)しくこう言いました。
「アラジンよ、よく聞くのだ! この岩の下にはどうくつがあり、どうくつの回廊(かいろう)は階段(かいだん)のある庭へと続いている。その階段の一番上に銅(どう)のランプがつり下がっているのだが、そのランプは、言い表わせないほどの大きなパワーと富(とみ)を秘(ひ)めているのだ。
 そして、そのランプは、おまえの名でふう印されていて、おまえ以外の者は持ち出すことができない。だから自分の名を告げてその庭に入るのだ。そうすれば、おまえには何も悪いことは起こらない。それから、行く時には周りにある物を何もさわってはならないが、ランプを持ち出した帰り道なら、庭の木の実をつんでもかまわない。
 わかったか? それじゃあ、わたしのこの金の指輪をおまえの指にはめて行け。これがおまえを守ってくれるのだ。」

 アラジンは恐(おそ)ろしさで口が利けず、男に答えることができませんでした。それで魔術師(まじゅつし)の指輪を指にはめ、その岩を持ち上げるのを手伝いました。

 アラジンはどうくつの奥へとおずおずと降(お)りていきました。回廊をたどっていくと階段へと差しかかり、その階段は何だか変なにおいのするどうくつの暗い奥底(おくそこ)へと続いていました。アラジンはこわくなってためらいましたが、あちこちの入り口からもれてくる光をたよりにしてさらに先に進みました。
 それらの入り口を一つずつ通り越(こ)していくたびに、回廊(かいろう)は光を増(ま)していったので、その明かりでアラジンはあたりにある金や宝石(ほうせき)がつまったたくさんの箱を見ることができました。しかしかれは魔術師(まじゅつし)にきつく言われていたので、それには決してさわりませんでした。

 そしてついに庭にたどりつくと、そこは太陽の下にいるように明るく輝(かがや)いていました。その時、アラジンはこのようにくり返して言うのを忘れませんでした。
「わたしはアラジンです。わたしの名はアラジンです!」
 それから庭を横切って階段(かいだん)のところへいき、それを登ってみると、魔術師(まじゅつし)が言ったように、ランプがつるしかけてあったのです。

 アラジンはランプをシャツの中におしこみ、帰り道を進もうとしましたが、その時、庭の木々にぶら下がる輝く実のようなものが目に入りました。赤や緑、そして山あいに流れる小川のような青い色、月光のようにすんだ黄白色の実……。

 そこでアラジンはポケットや服の中に入るだけ、それらをつみました。その価値(かち)ゆえではなく、その美しさゆえに。かれのように貧しい少年に、それが高価(こうか)な宝石(ほうせき)であるとどうしてわかるでしょうか。それがその大きさや良質(りょうしつ)さから、値(ね)がつけられないほど高価なものだなんて! こうしてアラジンはそれらのものを服につめこみ、魔術師(まじゅつし)が待つ場所へともどっていきました。

 アラジンは、回廊(かいろう)の入り口から出してもらおうと、にせの叔父(おじ)さんを呼(よ)びました。しかし魔術師(まじゅつし)は助けの手を差しのべる代わりに、心配げにこう言いました。
「ランプを持ってきたのか? 先にわたしにランプをわたすんだ。そのほうが登りやすくなるから。」
 しかしアラジンは、どうくつに立ちこめたけむりの中で、こう答えました。
「ランプはわたしが持っています! でも、服の中に入れて持ってきたたくさんの実がランプの上にあって、ランプを出すことができないんです。ですからわたしを出してください。お願いです!」

 それでも魔術師(まじゅつし)は冷たく同じことを命じ、どうくつから引き上げる前にランプをわたすよう脅(おど)しました。それを見てアラジンは、叔父と名乗るこの人物にさらに疑(うたが)いを持ち、自分も同じようにゆずらず、こう言ったのです。
「ランプはわたしません。わたしがどうくつから出ない限(かぎ)り!」
 すると魔術師(まじゅつし)は激怒(げきど)しました。かれは、回廊の下のほうからランプを受け取り、それから岩を元通りにもどしてやろうともくろんでいたのです。しかし、アラジンをこわがらせようと思って、かれはここで本当にそうしたのでした!

 すると急にどうくつの外のあらしが静まり、魔術師(まじゅつし)の目の前で、その岩は再(ふたた)び砂(すな)の中に姿(すがた)をかくし、跡形(あとかた)もなくなってしまいました。魔術師(まじゅつし)はもう一度岩を元にもどそうとして、むなしくじゅもんやまじないを唱えてみました。しかし、どんなにくり返してもうまくいかないので、しかたなく、東部へと帰るしかなくなりました。そのため、かれの心は失われた財宝(ざいほう)を思って、くやしさでキリキリと痛(いた)んだのでした。

 一方、アラジンは岩の下の回廊(かいろう)の暗やみにすわりこみ、自分の運の悪さをなげいて身をふるわせました。あのにせの叔父(おじ)さんについての疑(うたが)いも、これで確(たし)かなものになりました。
 かれはこうしてどうくつに閉(と)じこめられ、一人で岩を持ち上げられる望みもありません。それにかれのいる場所を知っていて、かれを助けることができる者は、あの邪悪(じゃあく)な魔術師(まじゅつし)のほかにいないのです。アラジンの心は乱(みだ)れ、自分の行く末を思って悲しみ、思わず両手をこすり合わせました。そしてそうするうちに、かれは魔術師(まじゅつし)からあたえられた指輪をも知らずにこすっていたのです。



 すると突如(とつじょ)、大きな音がしてどうくつがゆれたかと思ったら、アラジンは自分の目の前に、巨大(きょだい)な魔人(まじん)が立っているのを見たのでした!
 魔人は恐(おそ)ろしいような声でこう言いました。
「わたくしはあなたにお仕えする者です、ご主人さま! 何でもお申し付けください。あなたの言う通りにいたします!」
それを聞くとアラジンは思わず、「わたしをここから出してくれ。お願いだ!」とさけびました。すると一瞬(いっしゅん)のうちに、アラジンは、自分が魔術師(まじゅつし)と一緒(いっしょ)に火を燃(も)やしたあの丘(おか)の上にいるのに気づきました。時は夜明け前で、近くに魔術師(まじゅつし)がいる気配はありません。そこでアラジンは、自分の体を引きずるようにして町へもどり、ようやく家にたどり着いた時には、すっかりつかれ果てていました。

 それを見てアラジンのお母さんはこうさけびました。
「まあ! 神さまに感謝(かんしゃ)します! 息子(むすこ)よ、よく無事でいてくれたこと! 帰りがずいぶんおそかったじゃないか。わたしはおまえを心配して病気になりそうだったのだよ。一体どこに行っていたの?」

 そこでアラジンはお母さんにいきさつを話しました。邪悪(じゃあく)な魔術師(まじゅつし)のことや、ランプのこと、そしてどうくつでのできごとなど。それからかれは深いねむりにつき、いびきをかきました。
                


彩ちゃん
ああ、やっぱりあの魔術師(まじゅつし)はこわい人だったんですね! でも、アラジンがなんとか助かってお母さんのところに帰れて、本当に良かった、アルハムドリッラー。


ラナちゃん
でも、魔術師(まじゅつし)はあのランプが大きな力を持っているって言ったでしょう? 一体どんな力なのかしら?


ハキム
それは明日のお楽しみだよ、インシャーアッラー。とっても不思議なランプなのさ。


翔くん
ハキムおじいさん、ありがとう。明日も楽しみにしています、インシャーアッラー。


ハキム
インシャーアッラー。みんな気をつけて帰るんだよ。アッサラーム・アライクム。


      

 ラナ   ザキ
ワ・アライクムッサラーム!

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